皮膚病に対して他の動物の常在菌を傭兵として導入する
私たちの皮膚の上には複数の細菌が棲み着いています。
常在菌とよばれるこれらの細菌は私たちから分泌される汗や古くなった皮膚を食べることで生きています。
一方で、皮膚に害を及ぼす病原菌がやってきた場合、常在菌は自らの縄張りを守るために戦うことが知られており、結果として病原菌の駆除にも役立っています。
私たちと常在菌はギブ&テイクの関係にあると言えるでしょう。
しかし常在菌による防御は完璧ではなく、強烈な病原菌の侵入を許してしまうことがあります。
特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSP)は厄介です。
MRSPは家畜などの皮膚に多く含まれているほか、イヌやネコにもみられ、それら動物と接している人間にも感染します。重症化すると、皮膚の壊死を引き起こすこともあるそう。
さらにMRSPは多数の抗生物質に耐性を持つ「多剤耐性菌」であり一般的な抗生物質を用いた治療も困難です。
人間の常在菌は身近な病原菌に対しては「戦い方」を知っているため防御力を発揮しますが、種を超えて侵略してきた病原菌に対しては、しばしば無力です。
そこで今回、カリフォルニア大学の研究者たちは、無力な人間の常在菌の代わりに、イヌやネコの皮膚に棲む常在菌を傭兵として雇い入れる方法を考え付きました。
イヌやネコはMRSPと接する機会が多いため、彼らの皮膚に棲む常在菌ならば「戦い方」を知っているかもしれないからです。
研究者たちはさっそく、イヌやネコの常在菌を集め、MRSPとの直接対決を行わせました。