がん細胞だけを殺す「毒入りRNA」も可能
がん細胞だけを殺す「毒入りRNA」も可能 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
medical

狙った細胞に「自分を殺す毒」を作らせるRNA技術が登場

2021.11.02 Tuesday

がん細胞だけを殺すRNAができるかもしれません。

ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)で行われた研究によれば、狙った細胞に好きなタンパク質を生産させる特殊なRNA(eToehold)を開発した、とのこと。

がん細胞やウイルスに感染した細胞など特定の細胞に対して、毒となるタンパク質を生産させることができれば、がん治療や感染治療に革命が起こる可能性があります。

しかし、1本鎖の核酸に過ぎないRNAに、どうやって狙った細胞を認識させることができたのでしょうか?

研究内容の詳細は10月28日に『Nature Biotechnology』にて公開されました。

Engineers devise a way to selectively turn on RNA therapies in human cells https://news.mit.edu/2021/rna-therapies-control-human-cells-1028 Creating a new toehold for RNA therapeutics, cell therapies, and diagnostics https://wyss.harvard.edu/news/creating-a-new-toehold-for-rna-therapeutics-cell-therapies-and-diagnostics/
RNA-responsive elements for eukaryotic translational control https://www.nature.com/articles/s41587-021-01068-2

「毒入りRNA」で細胞を殺す

画像
Credit:Canva

現在の医学はRNA技術による変革期を迎えています。

RNAは生命の設計図であるDNAの部分的な写しであり、タンパク質を作るための直接的な鋳型となります。

そのためウイルスのRNAを人体に入れれば、ウイルスのタンパク質が作られ、免疫の学習材料にできるのです。

また細胞を殺すタンパク質の配列をRNAに組み込めば、RNAを取り込んだ細胞は内部で、自分を殺す毒を作らされる羽目になります。

内部で作られる毒は外部から注がれる同じ毒よりも効果的であり、がん細胞のような生命力の強い細胞も殺す(自壊させる)ことが可能です。

ただ既存の「毒入りRNA(毒タンパクの配列が含まれるRNA)」は残念なことに、細胞の違いを認識することができませんでした。

そのため、ひとたび毒入りRNAが注がれると、正常な細胞も、がん細胞も、ウイルスに感染した細胞も区別なく、平等に抹殺されてしまいます

そのため次善の策として、がんの腫瘍内部に毒入りRNAを直接注射するなどの方法が考案されましたが、血流に乗って拡散すれば、正常な細胞を殺してしまう可能性がありました。

毒入りRNAを狙った細胞のみで働かせるには、核酸の1本鎖に過ぎないRNAに、細胞ごとの特徴を何らかの方法で教え込まなくてはなりません。

今回、ハーバード大学とMITの研究者たちは、その方法を開発しました。

次ページ狙った細胞に狙ったタンパク質を作らせる複合RNA

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

医療のニュースmedical news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!