「毒入りRNA」で細胞を殺す
現在の医学はRNA技術による変革期を迎えています。
RNAは生命の設計図であるDNAの部分的な写しであり、タンパク質を作るための直接的な鋳型となります。
そのためウイルスのRNAを人体に入れれば、ウイルスのタンパク質が作られ、免疫の学習材料にできるのです。
また細胞を殺す毒タンパク質の配列をRNAに組み込めば、RNAを取り込んだ細胞は内部で、自分を殺す毒を作らされる羽目になります。
内部で作られる毒は外部から注がれる同じ毒よりも効果的であり、がん細胞のような生命力の強い細胞も殺す(自壊させる)ことが可能です。
ただ既存の「毒入りRNA(毒タンパクの配列が含まれるRNA)」は残念なことに、細胞の違いを認識することができませんでした。
そのため、ひとたび毒入りRNAが注がれると、正常な細胞も、がん細胞も、ウイルスに感染した細胞も区別なく、平等に抹殺されてしまいます。
そのため次善の策として、がんの腫瘍内部に毒入りRNAを直接注射するなどの方法が考案されましたが、血流に乗って拡散すれば、正常な細胞を殺してしまう可能性がありました。
毒入りRNAを狙った細胞のみで働かせるには、核酸の1本鎖に過ぎないRNAに、細胞ごとの特徴を何らかの方法で教え込まなくてはなりません。
今回、ハーバード大学とMITの研究者たちは、その方法を開発しました。