コーヒーの健康効果を2週間にわたり調査
研究主任のグレゴリー・マーカス(Gregory Marcus)氏は、本研究について、次のように述べています。
「コーヒーは世界で最もよく消費されている飲料ですが、その健康への影響は複雑であり、依然として不明です。
長期的な観察研究の大半は、コーヒーを飲むことで複数の潜在的な利益があることを示唆していますが、今回の研究は、コーヒー摂取による生理学的な影響をリアルタイムで調べた初のランダム化比較試験(RCT)です」
研究チームは、100人の健康な成人男女を対象に、ECG(心電計)デバイスと健康チェックモニターを装着してもらい、2週間にわたってコーヒー(カフェイン)摂取量、血糖値、運動量、睡眠時間、健康状態を記録しました。
その後、コーヒーを飲むグループと飲まないグループにランダムに振り分けて、実験開始です。
運動量は増えるが、睡眠時間は減る
データを分析した結果、コーヒーの摂取は、運動量の増加と睡眠時間の減少に一貫して関連していることが示されました。
まず、コーヒーを飲むグループは、飲まないグループに比べて、1日の平均歩数が1000歩ほど増えています。
より細かく計算すると、コーヒーを1杯飲むごとに、1日の歩数が約600歩増えていました。
その反面、コーヒーを飲むグループでは、飲まないグループに比べ、一晩あたりの睡眠時間が平均36分減っていたのです。
さらに、コーヒー消費量が1杯増えるごとに、睡眠時間が18分短くなっていると算出されています。
それから、コーヒーを飲むグループでは、心臓下部から発生する異常心拍が54%増加することが分かりました。
一方で、コーヒー消費量が多いと、心臓上部から発生する異常拍動の発生率は減少しています。
心臓下部からの異常心拍の頻度が高いと「心不全」のリスクが、心臓上部からの異常心拍の頻度が高いと「心房細動(しんぼうさいどう)」のリスクが増加します。
心房細動とは、心室が不規則に収縮しており、心臓に常に負担がかかっている状態です。 これが続くと心臓の機能がエラーを起こし、全身に十分な血液を送れなくなって心不全を引き起こします。
それと、コーヒーを飲む場合と飲まない場合とで、血糖値に有意な差はあらわれませんでした。
コーヒーには、プラス面もマイナス面もある
マーカス氏は、以上の結果について、こう述べています。
「本研究の成果は、コーヒーの摂取と健康の複雑な関係を浮き彫りにしています。
コーヒーを飲むことで促進される運動量の増加は、2型糖尿病や発がんリスクを低下させるなど、多くの健康上の利点があり、長寿にも関連します。
その一方で、睡眠時間の減少は、精神や神経、心血管にネガティブな影響を与えるでしょう」
つまり、コーヒーの摂取は、健康にとってプラスの面もあればマイナスの面もあることを意味します。
研究チームは今後、コーヒーを飲むことで一連の変化がなぜ起きるのかについて、詳しく解明する予定です。