草原に立ち、こちらを見つめる茶色い毛のヒグマ No.0022

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

クマ

Ursidae

においをかぐ力は、イヌよりすぐれる。
日本のクマは秋にたくさん食べ、冬は食べずに眠る。

ナゾロジーの記事
36本
今の世界のクマ
8種
走る速さ(日本のクマ)
40〜60km/時

クマは、哺乳類のクマ科に入る動物で、世界に8種がいます。日本には北海道にヒグマ、本州と四国にツキノワグマがすみ、植物中心の雑食で、冬は冬眠します。近年は人里への出没と人身被害がふえていて、出会わない工夫と、出会ったときの行動が大切です。

図鑑データ

分類
哺乳類 › 食肉目(イヌ型亜目)› クマ科
学名
Ursidae(クマ科)
英名
bear(ベア)
漢字
熊(ヒグマは「羆」とも書く)
種類
今の世界に8種(ヒグマ、アメリカグマ、ツキノワグマ、ホッキョクグマ、マレーグマ、ナマケグマ、メガネグマ、ジャイアントパンダ)
大きさ
最大はホッキョクグマ(オスの平均体重385〜410kgほど)、最小はマレーグマ(体重は重くても65kgほど)
日本のクマ
北海道にヒグマ(体長180〜200cm・体重150〜300kgほど)、本州・四国にツキノワグマ(体長120〜145cm・体重70〜120kgほど)。九州では絶滅したとされる
すみか
北アメリカ・南アメリカ・ユーラシアの約60か国。森、草原、高山、北極の海氷の上など
食べもの
多くは植物中心の雑食(草・木の実・果物・昆虫・魚・動物の死体など)。ホッキョクグマはおもに肉、ジャイアントパンダはおもにタケ
冬眠
日本のクマは11月下旬〜12月ごろから3〜5月ごろまで。冬眠中に出産する
寿命
日本の野生のクマで、ツキノワグマ15〜20歳ほど、ヒグマ20歳ほど(環境省の資料)
保全状況
IUCNレッドリストで6種が危急種以上(ツキノワグマ、ホッキョクグマなど)。ヒグマとアメリカグマは低懸念

クマとは(何科? 世界に8種)

クマは、哺乳類の食肉目クマ科に入る動物のなかまです。食肉目の中では、イヌに近いグループ(イヌ型亜目)に分類されます。今の世界にいるクマは8種だけですが、北半球を中心に、さまざまな環境に広くすんでいます。

草原に立ち、こちらを見つめる茶色い毛のヒグマ
アラスカのコディアック島のヒグマ写真: Yathin S Krishnappa(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

クマのなかまは、大きな体、太く短い足、長い鼻先、丸く小さな耳、もじゃもじゃの毛、短い尾をもっています。ホッキョクグマはおもに肉を、ジャイアントパンダはおもにタケを食べますが、残りの6種は、植物も動物も食べる雑食です。ふだんは1頭でくらし、群れはつくりません。いっしょにいるのは、ふつう母親と子どもや、繁殖の時期のオスとメスです。ただ、サケがたくさん上る川のように、食べものが多い場所には何頭も集まることがあります。

世界のクマ8種(種類と分布)

  • ヒグマ(英語:brown bear):ヨーロッパからアジア、北アメリカの西部まで、クマの中でいちばん広くすんでいます。日本では北海道にいます。北アメリカのヒグマの亜種は、グリズリー(ハイイログマ)と呼ばれます。
  • アメリカグマ(American black bear):北アメリカだけにすみます。
  • ツキノワグマ(Asian black bear、moon bear):アジアの東部やヒマラヤ山脈ぞいなどにすみ、日本では本州と四国にいます。
  • ホッキョクグマ(polar bear):北極海のまわりだけにすみます。シロクマとも呼ばれます。
  • マレーグマ(sun bear):東南アジアにすむ、いちばん小さなクマです。
  • ナマケグマ(sloth bear):インドなどにすみ、アリやシロアリをよく食べます。
  • メガネグマ(spectacled bear):南アメリカのアンデス山脈の地域にすむ、南アメリカでただ1種のクマです。
  • ジャイアントパンダ(giant panda):中国にすみ、食べものの99%以上がタケです。DNAの研究から、クマ科の一員とする考え方が有力です。

倒れた木の上を歩く、黒い毛で鼻先が明るい色の小さなクマ
マレーグマ(ボルネオ島)写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

木の幹のそばからこちらを見る、顔に白っぽい模様のある黒いクマ
メガネグマ(エクアドル)写真: Santiago Ron(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

名前(漢字・英語・発音)

漢字では「熊」と書き、ヒグマは「羆」とも書きます。英語ではクマを bear(ベア)と呼びます。この言葉は「茶色いもの」という意味からきたとする説と、「野生の動物」を意味する古い言葉からきたとする説があります。昔のゲルマン人が、クマの本当の名前を口にするとクマが現れるのをおそれて、遠回しな呼び名を使うようになったと考えられています。ロシア語でも、クマは「蜂蜜を食べるもの」という意味の言葉で呼ばれます。

日本語の「クマ」のアクセントは、放送では「クマ\」(マのあとで下がる)が使われてきましたが、ふだんの会話では「ク\マ」(クを高く言う)がよく使われるようになり、NHKのアクセント辞典は2016年から両方をのせています。

大きさと体のつくり(種類ごとの大きさくらべ)

クマのなかまには、陸にすむ今の食肉目の中で、いちばん重い動物がふくまれます。いちばん大きいのはホッキョクグマで、オスは体長2〜2.5m、平均体重は385〜410kgほどです。ヒグマも大きく、アラスカのコディアック島などにすむヒグマは、ホッキョクグマと同じくらいの大きさになります。いちばん小さいのはマレーグマで、体長100〜140cmほど、体重は重くても65kgほどです。絶滅した南アメリカのショートフェイスベアのなかまには、体重が推定1,600kgもあったものがいます。

雪の残る地面を歩いてくる、白い毛の大きなクマ
ホッキョクグマ(カナダ・チャーチル)写真: Ian Stewart(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

日本のクマでは、北海道のヒグマが体長180〜200cm・体重150〜300kgほど、本州・四国のツキノワグマが体長120〜145cm・体重70〜120kgほどです(環境省などの資料。大きなオスは、これより重くなることもあります)。どちらもオスのほうがメスより大きくなります。体重は季節で大きく変わり、春から夏にかけてやせて、秋には冬眠にそなえて脂肪をたくわえ、急にふえます。

  • 足:ヒトと同じように、かかとまで地面につけて歩きます(蹠行=しょこう)。後ろ足だけで立ち上がるのも得意です。前足は器用で、果物や葉をつかめます。
  • 爪:前足にも後ろ足にも5本の指があり、長く曲がった爪は引っこめられません。爪は、穴をほる、木に登る、物を引きさく、えものをつかむのに使います。大きなヒグマのオスなどをのぞき、多くのクマは木登りが得意です。
  • 歯:大きな犬歯をもちますが、植物を多く食べるため、奥歯(大臼歯)は平たく、食べものをすりつぶすのに向いています。
  • 鼻:においをかぐ力がとても強く、イヌよりすぐれているとされます。においで食べものを探し、何kmもはなれた所にある動物の死体を見つけることもできます。
  • 毛:長い毛と、空気をためる短く密な毛の二重になっていて、冬の寒さを防ぎます。ホッキョクグマの毛は中が空洞で光を通し、白く見えます。その下の皮ふは黒い色です。

2025年に発表された研究では、ホッキョクグマの毛には氷がくっつきにくく、それは毛についた脂(皮脂)の成分によることが分かりました。

ナゾロジーでくわしく北極圏の秘密兵器:ホッキョクグマの毛皮が濡れても凍らない本当の理由が判明

博物館の台の上に置かれた、四つ足で立つクマの全身の骨格
クマの骨格標本写真: Marco Vinci(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

能力(走る速さ・頭のよさ)

重そうな体ですが、走るのも、木登りも、泳ぐのも得意です。環境省などの資料では、日本のクマは時速40〜60kmほどで走れるとされ、人の足で逃げきるのはむずかしいとされています。ただし、速く走れるのは短い時間で、すぐに疲れるため、えものは追いかけるより待ちぶせしてとることが多いとされます。

学習する力が高く、とくに食べものについてよく覚えています。一度食べものを見つけた場所に、また現れることがあります。ヒグマは、体の大きさのわりに、食肉目の中でもとくに大きな脳をもつとされます。

鳴き声

クマは、いろいろな声や音を出します。親子どうしなど仲のよいときは、舌を鳴らしたり、低くうなったりします。おどろいたときや興奮したときには、ほえるような声を出します。相手に警告するときは、あごをカチカチ鳴らしたり、口を「ポン」と鳴らしたりし、争いになると、うなり声やほえ声をあげます。子グマは、困ったときに大きな声で鳴き、乳を飲んでいて心地よいときは、エンジンのような「ブーン」という音を出します。

声だけでなく、後ろ足で立ち上がって体を大きく見せたり、木に体をこすりつけてにおいを残したりして、なかまに合図を送ります。

どこにいる?(日本ではヒグマとツキノワグマ)

クマは、北アメリカ、南アメリカ、ユーラシア大陸の約60か国にすんでいて、その多くは北半球です。すむ場所は、熱帯の雨林から、針葉樹や広葉樹の森、草原、高い山、北極のツンドラまでさまざまで、ホッキョクグマは海に浮かぶ氷の上でくらします。アフリカ北部にもヒグマの亜種(アトラスヒグマ)がいましたが、1870年代ごろに絶滅し、今のアフリカにはクマはいません。

ナゾロジーでくわしくなぜシロクマは南極にいないのか?

日本のクマ(北海道・本州・四国)

日本には2種のクマがすんでいます。北海道にはヒグマ(エゾヒグマ)が、本州と四国にはツキノワグマがいます。どちらも、日本の陸にすむ哺乳類の中で最大級の動物です。ツキノワグマは、本州では千葉県をのぞく各地の森にすみ、四国では一部の地域にだけすんでいます。

後ろ足で座り、胸の白いV字形の模様を見せる黒いクマ
ツキノワグマ(胸の月の輪模様)写真: Guérin Nicolas(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

大きな岩のそばを歩く、茶色と黒の毛のヒグマ
エゾヒグマ(北海道)写真: Yuko Hara(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

ヒグマは、昔は本州にもすんでいて、後期更新世(氷河時代の終わりごろ)までは本州にいたとされます。2021年に発表された研究では、本州で見つかった3万2500年前のヒグマの化石からDNAを取り出して調べ、本州のヒグマは、大陸から少なくとも2回わたってきたと考えられることを示しました。

ナゾロジーでくわしくかつて本州には巨大なヒグマが生息していた

九州にも、かつてはツキノワグマがすんでいましたが、今は絶滅したとされています。四国のツキノワグマも数がとても少なく、20頭ほどと見られています。

東京都にもツキノワグマがいます。東京都が2025年度に多摩地域の森で行った調査では、都内のツキノワグマは120〜378頭(平均235頭)と推定され、数はふえていると考えられています。

クマのすむ範囲は、四国をのぞく各地で広がっています。環境省の調査で2003年度と2018年度をくらべると、クマがすんでいることが確かめられた5km四方の区画の数は、全国で139%にふえました。とくに平野部など標高の低い所に広がっていて、人がくらす場所に近づいています。

丸い大きな石が並ぶ水辺を歩く、黒っぽい毛のヒグマ
知床の野生のヒグマ写真: Captain76(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

数は減っている? ふえている?(絶滅危惧種か)

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、クマの6種が、絶滅のおそれがある種(危急種以上)とされています。ツキノワグマやホッキョクグマも危急種です。「低懸念」とされるヒグマやアメリカグマでも、国によってはいなくなるおそれがあります。

日本では、九州の個体群は絶滅したとされ、四国の個体群は数がとても少なくなっています。東京都のレッドリストでは、ツキノワグマは準絶滅危惧とされています。一方で、各都道府県が推定するクマの数は、ふえている地域が多くなっています。

何を食べる?(はちみつは好き?)

クマの多くは、植物も動物も食べる雑食で、動物より植物を多く食べます。葉や根、木の実、果物から、昆虫、動物の死体、魚、生きた動物まで、季節ごとに手に入るものを食べます。植物は、いちばん栄養があって消化しやすい時期のものを選んで食べます。

日本のクマ(ツキノワグマ・ヒグマ)も、植物中心の雑食です。季節ごとの食べものは、だいたい次のとおりです。

  • 春:山菜や草。冬の間に弱って死んだシカの死体を食べることもあります。
  • 夏:草、アリなどの昆虫、イチゴ類やサクラ類の実。シカの赤ちゃんを食べることもあります。
  • 秋:ブナやミズナラなどのドングリ(堅果類)、ヤマブドウやサルナシなどの実。冬眠にそなえて、たくさん食べます。サケがのぼる川では、サケが大事な食べもので、とくにヒグマにとって重要です。
白い花の咲く緑の斜面で、草を食べている黒いクマ
草を食べるツキノワグマ(乗鞍岳)写真: Alpsdake(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

動物をすすんでおそうことはまれですが、わなにかかったシカや、弱った動物を食べることはあります。食べきれない大きなえものは、土や枝をかけて隠し、あとで食べにもどります。この「土まんじゅう」に近づこうとすると、クマは攻撃的になります。

2023年に発表された研究では、奥多摩の山地で、4頭のツキノワグマにビデオカメラつきの首輪をつけ、何を食べているかを記録しました。すると、糞を調べるだけでは種類を見分けにくい葉や哺乳類なども、映像で確かめられました。カメラの映像は、1頭ごとの食べもののちがいを調べるのにも役立つとされています。

ナゾロジーでくわしく子供も殺して食べる!? 厳しいクマの生活を首輪カメラで撮影!

はちみつとハチ

クマのなかまには、ハチの巣をおそい、成虫のハチに刺されながらも、はちみつや幼虫を食べるものがいます。マレーグマは、長い舌で昆虫やはちみつをなめとります。はちみつをねらったクマが、養蜂の巣箱をこわす被害も出ています。

サケ、アリ、シロアリ

サケが川をのぼる時期には、たくさんのヒグマが川に集まります。川に飛びこんで、口や前足でサケをつかまえ、とくに脳や卵を好んで食べます。ただし、北アメリカの沿岸ではサケが栄養の30%以上をしめるのに対し、知床半島のヒグマでは5%ほどにすぎないとされます。

白く泡立つ流れの中で、口にサケをくわえたヒグマ
サケをとらえたヒグマ写真: Peter Pearsall / USFWS(Public domain) / Wikimedia Commons

ナマケグマは、上の前歯のまん中の2本がなく、つき出せる唇で、アリやシロアリを吸いこむように食べます。ツキノワグマもアリをよく食べます。夏に人工林でクマがよく見られるのは、林に残された間伐材にできたアリの巣がめあてだとみられています。

糞(ふん)と種まき

クマの糞の色は、食べたものによって変わります。ツキノワグマは、サクラなどの実を食べて、種を糞といっしょに運ぶ「種まき役」も果たしていて、クマが減ると、その地域で運ばれる種の量が減ることがあります。冬眠中は排せつをせず、冬眠明けに「留め糞(とめふん)」という固い糞を出します。

冬眠のしくみ(いつ・どこで・なぜ平気?)

日本のツキノワグマとヒグマは、どちらも冬眠します。11月下旬〜12月ごろに冬眠に入り、3〜5月ごろまで冬眠します。冬眠するためには、秋のうちにたくさん食べて、栄養をたくわえておく必要があります。冬眠明けは、オス、子のいないメス、子連れのメスの順で、子を産んだメスは遅めに出てくる傾向があります。

冬眠用の穴(冬眠穴)には、岩のすきまや木のうろ、根が地面から浮き上がった「根上がり」の下などを使うことが多く、自分で土に穴をほることもあります。ほら穴や、中が空洞になった倒木、しげった草むらなども、休み場所や隠れ場所に使います。

冬眠中のクマは、ふつう途中で目を覚まさず、何も食べず、水も飲まず、おしっこもうんちもしないで冬をこします。アメリカグマやヒグマなど北の地域のクマでは、体温は4〜7℃ほど下がり、心拍数は1分間に55回ほどから、少ないときは9回まで下がります。体温の下がり方は小さく、ネズミなど小さな動物の冬眠とはちがいます。

寝たままでも衰えない体

何か月も寝たままなのに、クマの体はほとんど衰えません。そのしくみも研究されています。

  • 筋肉:2022年の研究では、同じツキノワグマ8頭の筋肉を、7月と冬眠中の2月でくらべました。体重も、筋肉の線維の太さも、ほとんど変わっていませんでした。冬眠中は、筋肉のタンパク質を作るしくみと分解するしくみの両方が控えめになっていて、むだなエネルギーを使わないためと考えられています。
  • 血のかたまり:人は長い間動かないでいると、血管に血のかたまりができやすくなります(エコノミークラス症候群など)。2023年の研究では、冬眠中のヒグマの血小板で、HSP47というタンパク質が大きく減っていて、それが血のかたまりをできにくくしていることが分かりました。
  • 人への応用:冬眠中のツキノワグマの血清を、培養した人の筋肉の細胞に加えると、細胞のタンパク質の量がふえました(2022年の研究)。人の筋肉が衰えるのを防ぐ方法につながる可能性があります。
ナゾロジーでくわしく冬眠中のクマは「筋肉の省エネモード」で身体が全く衰えなかった

冬眠しないクマ

すべてのクマが冬眠するわけではありません。8種のうち冬眠が確かめられているのは、ホッキョクグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、アメリカグマの4種です。ホッキョクグマは、冬もアザラシを狩れるため、ふつうは冬眠せず、子を産むメスだけが巣穴にこもります。ツキノワグマでも、パキスタン南部の個体群は冬眠しないとされます。また、冬眠できるだけの栄養がたくわえられなかったときや、暖冬のとき、動物園のように冬も食べものがあるときは、冬眠しなかったり、途中で起きたりすることがあります。

ナゾロジーでくわしくホッキョクグマは冬眠するのか?

子育てと寿命

日本のクマの繁殖期は初夏(6〜7月)です。交尾してもすぐには受精卵が子宮に着かず、晩秋までそのままになります(着床遅延)。秋に十分な栄養をたくわえられないと、妊娠できないしくみと考えられています。

出産は冬眠中の1月下旬〜2月上旬ごろです。受精卵が子宮に着いてからの妊娠期間は約2か月と短く、母親は未熟な子を産んで、冬眠穴の中で育てます。ツキノワグマは1度に1〜2頭、ヒグマは1〜4頭(ふつう2頭)の子を産みます。生まれたばかりの子は目が見えず、毛もほとんどなく、母親のぬくもりにたよります。母親は冬眠状態のまま、目を覚ました子に乳を与えます。ホッキョクグマの赤ちゃんは、体重約0.6kgで生まれます。

子グマは、ツキノワグマで生後1年半ほど、ヒグマでは1年半から長いと2年半ほど、母親といっしょにすごし、食べものの探し方などを学びます。オスは子育てに加わりません。

草地に立つ母グマのそばに寄りそう、2頭の茶色い子グマ
子グマを連れたヒグマ写真: Lisa Hupp / USFWS(Public domain) / Wikimedia Commons

親ばなれは、繁殖期と同じ初夏です。メスは生まれた場所の近くにとどまりますが、若いオスは遠くへ移動します(分散)。繁殖できるようになるのは、ツキノワグマでオス2〜3歳、メス4歳ほど、ヒグマでオス2〜4歳、メス3〜4歳です。

ヒグマやホッキョクグマ、アメリカグマでは、オスがほかのオスの子グマを殺す「子殺し」が記録されていて、日本のツキノワグマでも2010年代から観察例が報告されています。子を失ったメスが、また発情するようになるためと考えられています。

寿命は何年?

クマの年齢は、歯にできる年輪のような層を数えて推定します。捕獲されたクマの年齢から、日本の野生のクマの寿命は、ツキノワグマで15〜20歳ほど、ヒグマで20歳ほどと考えられています。捕獲されたクマでは、ツキノワグマでオス25歳・メス23歳、ヒグマでオス30歳・メス34歳の記録があります。飼育されているクマはもっと長生きで、ツキノワグマで30歳をこえる記録、ヒグマで38歳の記録があります。ホッキョクグマの野生での寿命は25〜30年とされます。

なぜ人里に出てくる?(出没と被害の今)

近年、日本ではクマが人の生活する場所に現れる「出没」がふえ、人がけがをしたり亡くなったりする事故が相次いでいます。環境省のまとめ(都道府県から聞きとった速報値)では、2025年度のクマによる人身被害は216件、被害にあった人は238人、そのうち亡くなった人は13人でした。件数も人数も、環境省の表にある2008年度以降でもっとも多く、亡くなった人の数も過去最多を大きく更新しました。それまでもっとも多かった2023年度は、198件・219人・6人でした。2025年には、その年をあらわす「今年の漢字」に「熊」が選ばれています。

本州・四国のクマの出没件数も、2025年度は5万801件と、前年度(2万513件)の2倍をこえました(北海道は出没件数を公表していません)。とくに10月は1万5998件と、1か月で多くの出没がありました。

クマのなかまのいくつかの種は人にとって危険で、とくに人に慣れた地域で事故が起こりやすく、そうでない所ではふつう人をさけます。日本では、ヒグマ・ツキノワグマのどちらでも事故は起きていて、2025年度に亡くなった13人のうち、11人はツキノワグマ、2人はヒグマによるものでした。

出没がふえた理由

クマが人里に出てくる理由は、一つではありません。環境省の資料では、次のようなことが挙げられています。

  • ドングリの不作:秋の大事な食べものであるブナやミズナラなどの実が不作の年は、クマが食べものを探して動きまわる範囲が広がり、人の生活する場所に現れやすくなります。
  • すむ場所が人に近づいた:クマのすむ範囲は、平野など標高の低い所にも広がっています。人が里山を使わなくなって森が育ち、クマの食べものになる実をつけたり、冬眠穴になったりする大きな木がふえたことも、里山をクマにとってすみやすい場所にしています。
  • 人里の変化:山あいの集落では、人口が減り、お年寄りの割合がふえました。人の活動が減るとクマの警戒心が下がり、手入れされなくなった畑のやぶはクマの隠れ場所になります。収穫されずに残ったカキやクリの木は、クマを集落に呼びよせます。
  • 若いオスの移動:親ばなれした若いオスが遠くへ移動するため、春から夏にかけて、若いオスが人の生活する場所でよく出没します。
  • 数の増加:都道府県が推定するクマの数は、ふえている地域が多くなっています。

人の食べものや生ごみ、果物の味を覚えたクマは、その場所に執着して、何度も現れるようになります。そのため、クマを呼びよせるものを片づけることが、とても大事な対策になります。

いつ・どこに出る?(時期と時間帯)

出没の数は、6月ごろに多くなっていったん減り、10月にまたふえる年が多くなっています。秋は冬眠前で食欲がふえる時期で、1日の活動時間が長くなり、夜に動くこともふえます。

クマはふつう昼に活動しますが、人の生活する場所に近づくときは、明け方や夕方の薄暗い時間に動くことが多くなります。早朝や夕暮れは、とくに注意が必要です。

クマがすむのは森が中心ですが、近年は、草がしげった場所や川ぞい、果物などがある畑や人里にも出没しています。

クマの出没情報は、各都道府県や市町村が、ホームページや地図などで知らせています。環境省のホームページには、都道府県ごとの出没情報へのリンクがまとめられています。山に出かける前や、クマが出る地域でくらすときは、こまめに確かめることがすすめられています。

森の木に取り付けられた、黒いクマの絵と「熊出没注意」「秩父市」の文字がある黄色い看板
「熊出没注意」の看板(埼玉県秩父市)写真: Guilhem Vellut(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

昔からの人とのかかわり

クマは昔から、世界の多くの地域で、神や知恵のある存在として信仰されてきました。北海道のアイヌの人びとは、ヒグマを「キムンカムイ(山の神)」と呼んで敬い、育てた子グマを神の世界に送り返す「イオマンテ(熊送り)」という儀式を行ってきました。一方で、人を傷つけたヒグマは「ウェンカムイ(悪い神)」とみなされました。

北海道では、大正時代に、ヒグマにおそわれて7人が亡くなった「三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)」が起きています。

人とクマの関係は、クマの性質にも影響しているかもしれません。イタリアの山里で古くから人と共存してきた、数の少ないアペニンヒグマのゲノムを調べた2025年の研究では、攻撃性の低さとかかわるとされる遺伝子に、この集団に特有の変化が見つかりました。研究者は、人による選択が、人との衝突を減らす方向にクマの行動を変えた可能性がある、としています。

ナゾロジーでくわしく人間の近くに住むことでクマは小さくなり攻撃性も低下した――DNAが示した進化の痕跡

クマに出会わないために・出会ったら(対策)

いちばん大切なのは、クマに出会わないことです。環境省や自治体は、次のようなことをすすめています。

  • ひとりで行動せず、なるべく何人かでいっしょに行動する。
  • クマ鈴やラジオ、会話、手をたたくなどして、人がいることをクマに知らせる。見通しの悪い所や、沢の音が大きくひびく所では、とくに注意する。
  • クマの足あとやフン、爪あとを見つけたら、近づかずにその場を離れる。
  • 出没情報を確かめ、クマの動きが活発になる早朝や夕暮れに気をつける。
  • 生ごみを外に置かない、収穫しないカキなどの果樹を切る、家のまわりのやぶを刈って見通しをよくするなど、クマを寄せつけない環境をつくる。

出会ってしまったら

クマが遠くにいるときは、あわてず静かにその場を離れます。近くにいるときも、走って逃げてはいけません。クマは逃げるものを追いかける傾向があるので、背中を見せずに、クマを見ながらゆっくり後ずさりして距離をとります。急に大声をあげたり、急に動いたりすると、クマをおどろかせてしまいます。

クマが向かってきても、本気の攻撃ではなく、すぐに止まって引き返す「威嚇突進(ブラフチャージ)」のこともあります。また、子グマを見かけたら、すぐ近くに母グマがいる可能性が高いので、近づかずにすぐ離れます。母グマは、子を守ろうとして攻撃的になりやすいからです。

襲われたら(うつぶせの防御姿勢)

クマにおそわれそうになったときは、最後の手段として、うつぶせになり、両腕で顔や後頭部をおおって、急所を守る「防御姿勢」をとります。クマの攻撃は顔や頭に集中しやすく、ツキノワグマは一撃を加えたあと、すぐに逃げていくことが多いとされます。東京都も、うつぶせになって丸まり、組んだ両手で首の後ろ側を守るようにすすめています。

2025年に発表された秋田大学の研究者らの研究では、2023年度に秋田県でクマにおそわれてけがをした70人を調べました。重症だったのは23人(32.9%)で、顔面神経まひや目の障害が残った人もいました。うつぶせの防御姿勢をとれたのは7人(10.0%)だけでしたが、7人とも重症にはなりませんでした。研究者は、防御姿勢がクマによるけがの重症化を防ぐ可能性がある、としています。

クマによる顔のけがは、骨折をともなうなど重くなりやすいことも、医療の報告から分かっています。2018年に報告された、顔にけがをした13人の例では、10人に顔の骨の骨折がありました。

ナゾロジーでくわしく「重症を防ぐポイント」クマに有効な防御姿勢の研究

クマ撃退スプレー

クマ撃退スプレーは、トウガラシの辛み成分(カプサイシン)をふき出す道具で、持っていると攻撃をさけられる可能性が高くなるとされます。クマの顔(目や鼻)をねらってふきつけます。届く距離が5mほどと短い製品が多いので、製品の説明を確かめ、十分に引きつけてから使います。届く距離が5mほどと短い製品が多いので、すぐ取り出せるように身につけ、使い方を前もって確かめておくことが大切です。選ぶときは、クマ用の撃退スプレーであることや、ふき出す距離・時間などの表示を確かめます。

政府や自治体の対策

クマは、鳥獣保護管理法という法律のもとで管理されている野生動物で、被害を防ぐための捕獲は、許可を受けて行われています。2025年度に許可を受けて捕獲されたクマは、全国で1万4741頭でした。人が多く住む場所では、原則として銃を使えませんでしたが、2025年9月からは、人の日常生活の場にクマが出てきたとき、市町村の判断で、条件つきで銃による捕獲ができる「緊急銃猟」が始まりました。

2025年11月には、政府が「クマ被害対策パッケージ」をまとめ、人の生活圏からクマを排除すること、周辺での捕獲を強めてクマの数を減らし管理すること、人とクマのすみ分けを進めることなどを打ち出しました。環境省や文部科学省は、子どもと家族向けのリーフレットなどで、クマの生態や、出会ったときの行動を伝えています。

よくある疑問

クマは何科? 何類?
クマは哺乳類で、食肉目のクマ科に入る動物です。食肉目の中では、イヌに近いグループ(イヌ型亜目)に分類されます。今の世界には8種がいて、ジャイアントパンダもクマ科の一員とする考え方が有力です。
ツキノワグマとヒグマの違いは?
日本では、北海道にすむのがヒグマ、本州と四国にすむのがツキノワグマです。ヒグマのほうが大きく、環境省などの資料では、ヒグマは体長180〜200cm・体重150〜300kgほど、ツキノワグマは体長120〜145cm・体重70〜120kgほどです。ツキノワグマは体毛が黒く、胸に白い月の輪の模様があるのが特徴です(模様のない個体もいます)。ヒグマの毛の色は茶色から黒までさまざまで、肩の筋肉が盛り上がっています。前足の幅も、ヒグマは12〜18cm、ツキノワグマは7〜13cmとちがいます。
クマはいつ冬眠する? いつ起きる?
日本のクマは、11月下旬〜12月ごろに冬眠に入り、3〜5月ごろに冬眠から明けます。冬眠中は何も食べず、水も飲まず、排せつもしません。冬眠明けはオスが早く、子を産んだメスは遅めです。冬眠できるだけの栄養がないときや暖冬のときなどは、冬眠しなかったり、途中で起きたりすることもあります。
クマの寿命は? 何年生きる?
捕獲されたクマの年齢から、日本の野生のクマの寿命は、ツキノワグマで15〜20歳ほど、ヒグマで20歳ほどと考えられています。捕獲された野生のクマでは、ヒグマのメスで34歳の記録があります。飼育されているクマはもっと長生きで、ヒグマで38歳の記録があります。
クマの走る速さは?
環境省などの資料では、日本のクマは時速40〜60kmほどで走れるとされます。人の足で逃げきるのはむずかしく、背中を見せて走るとかえって追いかけられることがあるので、クマに出会ったら走らず、クマを見ながらゆっくり後ずさりして離れます。
クマに襲われたらどうする?
まずは出会わないことが大切です。出会ってしまったら、あわてず、背中を見せずにゆっくり離れます。それでもおそわれそうになったら、最後の手段として、うつぶせになって両腕で顔や後頭部を守る「防御姿勢」をとります。クマ撃退スプレーを持っていれば、クマの顔に向けてふきつけます。
クマはなぜ九州にいないの?
九州にも、かつてはツキノワグマがすんでいましたが、今は絶滅したとされています。環境省のクマの出没件数の集計でも、九州・沖縄の8県はクマがすんでいないため、調べる対象から外されています。熊本県のくまモンもクマがモデルですが、熊本県では今、野生のクマは確認されていません。
クマはなぜ駆除しないの?
駆除はされています。クマは鳥獣保護管理法のもとで管理されている野生動物で、被害を防ぐための捕獲は許可を受けて行われていて、2025年度には全国で1万4741頭が捕獲されました。ただ、人が多く住む場所では、安全のため銃の使用が厳しく制限されてきました。2025年9月からは、市町村の判断で銃による捕獲ができる「緊急銃猟」が始まっています。四国のように数がとても少ない地域もあり、地域ごとに保護と管理を考えた対策がとられています。

ナゾロジーで読む36本

  1. 01 「白銀色のヒグマ」の子どもを発見、米カトマイ国立公園
  2. 02 人間の近くに住むことでクマは小さくなり攻撃性も低下した――DNAが示した進化の痕跡
  3. 03 なぜシロクマは南極にいないのか?
  4. 04 ホッキョクグマのお母さんが養子をとった!非常に珍しい例だと話題に
  5. 05 ホッキョクグマが温暖化で生き残るため「DNAを書き換えていた」

近いなかまの図鑑

同じイヌ亜目

同じ食肉目

参考文献

  1. 石垣佑樹 ほか (2025) クマに対する防御姿勢は有効か?—秋田県令和5年度データの解析. 臨床整形外科 60(7)
  2. 鈴木真輔 ほか (2018) クマによる顔面外傷13症例の検討. 頭頸部外科 28(2)
  3. Miyazaki M ほか (2022) Regulation of protein and oxidative energy metabolism are down-regulated in the skeletal muscles of Asiatic black bears during hibernation. Scientific Reports
  4. Thienel M ほか (2023) Immobility-associated thromboprotection is conserved across mammalian species from bear to human. Science
  5. Miyazaki M ほか (2022) Supplementing cultured human myotubes with hibernating bear serum results in increased protein content by modulating Akt/FOXO3a signaling. PLOS ONE
  6. Segawa T ほか (2021) Ancient DNA reveals multiple origins and migration waves of extinct Japanese brown bear lineages. Royal Society Open Science
  7. Tezuka S ほか (2023) Comparing information derived on food habits of a terrestrial carnivore between animal-borne video systems and fecal analyses methods. Journal of Mammalogy
  8. Carolan J ほか (2025) Anti-icing properties of polar bear fur. Science Advances
  9. Fabbri G ほか (2025) Coexisting With Humans: Genomic and Behavioral Consequences in a Small and Isolated Bear Population. Molecular Biology and Evolution
  10. 環境省 (2021) クマ類の出没対応マニュアル-改定版-
  11. 環境省「クマ類による人身被害について[速報値]」(2026年10月14日版)
  12. 環境省「クマ類の出没情報について[速報値]」(2026年10月14日版)
  13. 環境省「クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]」(2026年10月14日版)
  14. 環境省「クマ類の生態について(参考資料2)」
  15. 環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について(参考資料1)」
  16. 環境省「国民向けのクマに関する情報」
  17. 文部科学省・環境省「児童生徒等のクマ被害防止対策(保護者向けリーフレット)」
  18. 環境省「クマ撃退スプレーの備え方」(ポスター)
  19. クマ被害対策等に関する関係閣僚会議 (2025) クマ被害対策パッケージ(概要)
  20. 東京都環境局「クマについてのQ&A」
  21. Wikipedia「クマ」(日本語版)
  22. Wikipedia「ヒグマ」(日本語版)
  23. Wikipedia「ツキノワグマ」(日本語版)
  24. Wikipedia「ホッキョクグマ」(日本語版)
  25. Wikipedia「Bear」(英語版)
  26. Wikipedia「Brown bear」(英語版)
  27. Wikipedia「Asian black bear」(英語版)
  28. Wikipedia「Polar bear」(英語版)
  29. Wikidata「クマ科 Ursidae」(Q11788)

表紙の写真: Yathin S Krishnappa(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。