あらゆる生物は常に「光」を放っている?
ホタルや深海魚など、生物の中には自ら強い光を放つ「生物発光」の能力を持つものがいます。
しかし実は、光を放っているのは彼らだけではありません。
私たち人間も、いや、それ以外の植物や動物も極めて微弱な光を常に放っているのです。
これらは目に見えないほど弱い光であることから「超微弱光子放出(Ultraweak Photon Emission, UPE)」と呼ばれています。
UPEは細胞の代謝活動、特に酸化反応によって発生する副産物の一種です。
言い換えれば、私たちが生きて呼吸しているだけで、体内では“目に見えない光”が絶えず生まれているのです。
この現象自体は1920年代から知られており、玉ねぎの根が発する「ミトジェネティック放射(成長を促す光)」として最初に記録されました。
以来、UPEはあらゆる植物や動物の細胞からも確認されており、生体内の酸化ストレスや老化、さらにはがんの診断補助にも応用が期待されてきました。

中でもとくに興味深いのが「脳」です。
脳は体の中で最も代謝が活発な臓器のひとつであり、神経活動に伴って活性酸素が多く発生します。
理論的には、脳からも大量のUPEが発生しているはず――なのですが、これまで人間の脳からUPEを検出することは技術的に困難でした。
そんな中、アルゴマ大学を中心とする研究チームが、ついに“その一筋の光”を捉えたのです。