医師の評判と業界マネーの知られざる関係

医師には、患者の健康と幸せを第一に考え、公平な医療を行うことが求められています。
しかし現実には、一部の医師が患者に対して適切でない対応をして苦情を受けたり、製薬会社から高額な謝礼や贈り物を受け取ったりすることがあります。
前者のような苦情は、患者との信頼関係を壊し、医療ミスや訴訟のリスクを高めてしまいます。
後者は、医師の判断にお金や利益が影響する「利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト、COI)」という問題を生むことになります。
たとえば、患者からの苦情が多い医師は、苦情のない医師と比べて、将来に医療ミスで訴えられるリスクが約3倍になるという研究もあります。
一方、アメリカでは2014年から、医師と製薬会社などとの金銭的な関係を明らかにする「Open Payments(オープン・ペイメンツ)」という公開システムが始まりました。
この制度では、製薬会社や医療機器メーカーが医師や病院に支払ったお金の情報を毎年公開しています。
2015年から2023年の間に、アメリカ国内の医師や病院が受け取った金額の合計は728億ドルで、そのうち研究とは関係ない一般的な謝礼(講演料や相談料、食事代、旅行費など)は223億ドルにものぼりました。
このような背景から、「患者からの苦情の多さ」と「企業からの支払いの多さ」という2つの問題の関連性が疑われるようになってきました。
あえて簡易な表現をとれば、「評判の悪い医者は研究費ではない多額のお金を企業から受け取りる傾向があるかどうか」が焦点になってきたのです。
そこでアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学とヴァンダービルト大学の研究チームは、大規模な調査を行い、2つの関連性を調べることにしました。