モロッコで見つかった「奇妙すぎる恐竜」
2019年、英ロンドン自然史博物館(NHM)の古生物学者は、ケンブリッジの化石商から奇妙な恐竜の骨を入手しました。
これは肋骨の一部でしたが、その表面には骨と一体化したトゲが突き出しており、動物界ではこれまでに確認されたことのない構造だったのです。
研究チームは、この驚くべき恐竜に「スピコメルス・アフェル(Spicomellus afer)」と名付けました。
名前の由来は、ラテン語で「トゲ」を意味する「spica」と「首輪」を意味する「mellum」にあります。
つまり「トゲの首輪を持つ者」という意味合いです。
しかし当初、この化石が本当にアンキロサウルス類に属するのかどうかについては疑問視する声もありました。
なぜなら、アンキロサウルス類は通常、背中を覆う骨の板(装甲)や棍棒のような尾を持っていましたが、肋骨に直接トゲが融合している例は前代未聞だったからです。
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この謎を解き明かすため、イギリス・アメリカ・モロッコの共同研究チームが現地調査に乗り出しました。
調査の結果、ブーレマーヌ周辺で新たに複数のスピコメルスの骨格が発見され、その全身が驚くほどのスパイクで覆われていたことが判明しました。
スピコメルスは、肋骨だけでなく、腰から突き出す巨大なトゲや、刃のような骨が体側を走り、さらにトゲで縁取られた骨の襟(ネックカラー)まで備えていました。
研究によると、首の両側に突き出たトゲは87センチ以上に達し、生前はケラチンの鞘に覆われてさらに長くなっていた可能性が高いといいます。
つまり、スピコメルスは「全身を武器化した恐竜」だったのです。
研究チームは、この特徴がこれほど古い時代のアンキロサウルスに見られること自体が進化の常識を揺るがすと指摘しています。