脳は声の音を聞きわけても内容までは気にしない
睡眠時に行われる聞きわけと学習を利用すれば夢の睡眠学習も可能なのか?
この魅力的な謎を調べるため研究者たちは採取した音声サンプルにあらかじめトリックを仕込んでおきました。
採取した音声サンプルは全て人間の名前を読み上げたものであり、その中には被験者本人の名前と他人の名前の両方が含まれていたのです。
人間の脳は自分の名前に反応する特殊な領域があり、騒がしい集団の中にあっても自分の名前を含む会話を素早くみつけることが可能です。
そのためもし睡眠中の脳に自分の名前と他人の名前を聞かせることで、声の音だけでなく言語情報も認識しているかどうかを調べることが可能になります。
研究者たちが集められたデータを分析したところ、残念なことに、睡眠中の脳は自分の名前にも他人の名前にも同じように反応していることが判明しました。
つまり睡眠中の脳の判断・学習は声の音に対してのみ行われており、声が含む言語的な情報についてはノータッチだったのです。
(※1999年にフランスで行われた同様の研究では「睡眠中でも自分の名前に反応する」とする研究結果を出しており、本研究の結論とは相いれない結論になっています)
本研究が正しい場合、外国語の複雑な文法の解説動画を睡眠中に垂れ流したところで現状では、学習効果は望めないと言えるでしょう。
ただ脳科学が進歩した現在にあっても、睡眠中の脳の働きの多くが謎に包まれています。
もしかしたら遠い将来、睡眠時に働いているもう1人の自分(自動監視システム)に特殊な働きかけを行って学校のテストの成績を上げるような、本当の睡眠学習が実現するかもしれません。