魚竜は「陸から海に戻った爬虫類」から進化した
魚竜は、クジラと同じように陸上から海洋に戻ったグループで、約2億5000万年前の三畳紀前期に出現しました。
祖先にあたる陸生爬虫類の正体は不明ですが、水中にうまく適応し、海の捕食者としてトップに君臨したと言われています。
体長は平均2〜4メートルで、現代のイルカによく似た容姿で、細長い口先を持っていました。
泳ぎの上手さと、歯の生えた長い口を使って、カメやタコ、イカなどを捕食していたようです。
魚竜は約1億6000万年の間、繁栄したのち、恐竜より少し早い9000万年前に絶滅しています。
海の頂点捕食者としての後釜には、首長竜やモササウルスがつきました。
こちらは、19〜20世紀初めにかけて制作された魚竜の復元画および像です。
300年の研究データと彫刻技術を使って、完全復元!
これまでに見つかっている魚竜の化石のほとんどは骨と歯ですが、近年、皮膚や筋肉、脂肪、色素などの軟組織が発見されつつあります。
それもあって、詳細なイメージを復元する機運が高まっていました。
そこでルンド大学の地質学者らは、魚竜に関する既存の研究を集めて、分析することに。
「魚竜研究の歴史は約300年前にまで遡ります。
”魚竜(ichthyosaur)”という用語は1814年に作られたもので、”恐竜(dinosaur)”よりも30年近くも早く作られているのです」
研究主任のマッツ・E・エリクソン(Mats E. Eriksson)氏はそう語ります。
チームは、魚竜についての世界的な知識、骨や軟組織を含む化石をもとに、デンマークの彫刻会社・10 Tonsの協力を得て、科学的に正確な実物大の復元像を作成しました。
チームが参考モデルにしたのは、1890年代にドイツ南部バーデン=ヴュルテンベルク州の町ホルツマーデンで発見された魚竜の化石です。
最初にデジタル上で3Dモデルを作成し、それをもとに3Dプリンタを使って部位を作っていきます。
また、粘土細工や色調再現など、さまざまな技術を駆使し、1年余りの時間をかけて像を完成させました。
復元像の全長は1.6メートルで、何者かに捕食された傷跡まで忠実に再現しています。
完成した復元像は現在、ルンド大学の地質学部にて一般公開されています。
エリクソン氏は、こう述べています。
「私たちの復元は、魚竜がどんな姿をしていたかについて、科学的に最も現代的で正しい解釈となるものです。
これは、この象徴的な魚竜についてもっと知りたいと思っている学生や研究者にとって貴重なものとなるでしょう」