冬が暖かくなり、渡りをしないツバメが増加中
ツバメが夏の終わりに南下するのは、ヨーロッパの冬が寒すぎて、エサとなる飛翔昆虫がいなくなることが理由です。
こうしたツバメの渡りは大昔から知られています。
紀元前500年頃に作られたギリシャの有名な壺には、「もう春だ(spring already)」という一文とともに、帰ってきたツバメを見上げる3人の男が描かれています。
しかし近年、暖冬が続いているせいか、冬時期もそのままイギリスに居残るツバメが散見され始めているのです。
英国鳥類学協会(BTO)のバードウォッチャーによる定期的な観察調査の結果、今年1月1日〜2月1日の間に、最大12羽のツバメをイギリス南部およびアイルランドで確認した、という報告が100件近く寄せられたのです。
BTOの科学部長であるジェームズ・ピアース=ヒギンズ(James Pearce-Higgins)氏は「ツバメが生存できるほど冬が暖かいというのは、数十年前には考えられなかったことでしょう」と述べています。
また、BTOの最高責任者であるジュリエット・ビッカリー(Juliet Vickery)氏は「実に驚くべきこと」と指摘。
「ツバメの行動変化は、気候変動によって世界の温暖化が進んでいることを示す、これまでで最も顕著な兆候の一つです。
今後、冬が暖かくなるにつれて、渡りを辞めるツバメがますます増えるかもしれません」
ツバメは冬の間、どこへ行く?
イギリスのツバメが冬にどこへ行くかは、ここ1世紀あまりの調査でようやく明らかになっています。
その一つが、南アフリカです。
1912年12月、南アフリカ共和国ナタール州の農場で1羽のツバメが捕らえられました。
このツバメは、18カ月前にイングランド・スタッフォードシャーにある自宅のポーチで、弁護士でアマチュア博物学者のジョン・マセフィールド(John Masefield)氏が脚にはめた指輪を身につけていたのです。
これはマッチ箱ほどの大きさの鳥が毎年、サハラ砂漠の横断を含む6000マイルの旅をしていることを証明する驚くべき発見でした。
BTOによると、温暖化の煽りを受けているのは、ツバメだけではないという。
最近発表された「イギリスの鳥類と気候変動」レポートによると、イギリスで繁殖する鳥類の最大4分の1が影響を受ける可能性があるとのこと。
また温暖化の影響は、鳥以外の動物にもおよぶと考えられます。
たとえば、このまま冬が暖かくなり続ければ、冬眠をする動物がいなくなるかもしれません。