実は地球にすごくいっぱい落ちている小惑星
恐竜たちが巨大小惑星の衝突で滅んだように、地球にはたびたび壊滅的な小惑星がやってきます。
そのためNASAは地球近傍天体(NEO)を観測していて、これを防衛するための計画(DART)を立てています。
しかし、これは人類を滅亡させる恐れがあるような数十キロメートル規模の巨大な小惑星の話であって、100メートル以下のサイズの小惑星については、暗すぎるため地球衝突の数時間前から数カ月前というタイミングでないと発見することができません。
そしてほとんどの小惑星は見つけることさえできないまま、地球に落下しています。
先日、2022年3月11日に発見された小惑星「2022 EB5」が、その2時間後に地球に衝突したというニュースを紹介しました。
これは衝突前に発見できた小惑星の観測史上5番目の例です。
小惑星なんて滅多に落ちてこないから、そんなもんなんだろう、と思った人もいるかもしれません。
しかし、実際そんなことはありません。小惑星は予想以上に大量に地球に落ちているのです。
下の画像はNASAがまとめた1988年4月15日から2022年1月11日までに報告されている小惑星落下位置とその爆発規模を示したマップです。
地球に衝突した小惑星のすべてではなく、あくまで報告された件数に過ぎない点に注意してください。
先日の小惑星「2022 EB5」はこのマップ上に集計されていませんが、この小惑星の爆発はTNT換算で3kt相当のエネルギーだったとされています。
これは上記マップ上で主に緑色の円で示されているのが、同規模の小惑星爆発です。
黄色になるとTNT換算で15kt、オレンジだと30ktという規模になります。
もっとも目立つ赤い円は、近年きちんと観測された中ではもっとも規模が大きかった2013年ロシアのチェリャビンスクに落下した隕石で、その爆発エネルギーはTNT換算で500ktだったとされています。
TNT換算と言われても今ひとつイメージできない人向けに説明するならば、2020年に多くの人が動画でも目撃したレバノン首都ベイルートの港爆発事件はTNT1.1kt相当だったと推定されています。また広島型原爆15kt相当だったと推定されています。
つまりチェリャビンスク隕石は広島型原爆の30倍に相当する爆発エネルギーだったと推定されているのです。
それだけの爆発でも壊滅的な被害になっていないのは、小さな小惑星は非常に高高度で空中爆発してしまうためです。
チェリャビンスク隕石のサイズは15m程度だったと考えられており、上空15km以上の高高度で空中爆発したため、地上に届いたのは衝撃波の一部に過ぎなかったのです。
それでも、地上では衝撃波でビルの窓ガラスが割れる、屋根が壊れるなどの被害が報告されており、また爆発の100km圏内では太陽より明るい輝きが確認され屋外にいた人がその熱線(紫外線)で火傷したという報告もされています。
NASAがまとめたデータに対して、驚くほど小惑星落下に関する報道が少ないのは、単にそれが人のいる地域に落ちなかったからです。
地球表面の多くは海であり、人が大勢住んでいる地域も限定されているため、これまでのところ近代的な都市の真上に小惑星が落下したことはないのです。
広範囲で樹木がなぎ倒されたツングースカ大爆発も、このチェリャビンスク隕石の分析から60m規模の小惑星の空中爆発だっただろうと推定されていますが、これも人里離れた遠隔地で起きたものです。
NASAなどの宇宙機関は、これまで小さい小惑星で大きな被害が出なかったのは、単に運がよかっただけだと考えています。
もしツングースカ大爆発レベルの事象が、近代都市の上空で起きた場合、その被害は計り知れません。
しかし、先日の小惑星「2022 EB5」のニュースでも分かる通り、数メートルから数十メートル規模の小惑星は、地球から離れた位置ではほとんど見ることができないため、発見されてから数時間程度で地球に衝突する可能性が高いのです。
では、このような状況に対して、我々は一体どうしたら良いのでしょうか?