隕石落下の衝撃をとどめた「タニス」の化石群
発掘地としてのタニス(Tanis)は、2008年に、カナダとの国境をなす米ノースダコタ州で発見されました。
そこからは、隕石落下直後の衝撃を物語る混沌とした化石群が出土しています。
木の杭が突き刺さった亀、トリケラトプスの皮膚、哺乳類の遺体とその巣穴、卵の中の翼竜の胚、衝突時に出た破片など、枚挙にいとまがありません。
発掘を率いたマンチェスター大学(University of Manchester)の大学院生、ロバート・デパルマ(Robert DePalma)氏は「タニスでは、衝突直後の一瞬一瞬を伝える多くの情報が得られており、まるで映画の中の出来事を見ているようです」と話します。
今から遡ること6600万年前、ユカタン半島沖のメキシコ湾に直径約12kmの隕石が落下しました。
その衝撃は凄まじく、地上の粉塵を巻き上げ、地球規模の気候変動を起こし、動植物の75%を絶滅させたと言われています。
タニスは落下地点から約3000キロ離れているにもかかわらず、甚大な被害を受けました。
衝突により大陸プレートが激しく揺さぶられ、海や川、湖など、あらゆる水域に巨大な津波を引き起こしたのです。
これは恐竜も動植物も見境なく飲み込んで、死に至らしめました。
そのため、タニスで見つかった化石群は、陸や水中の生物、植物が入り混じっています。
研究チームがまず注目したのは、チョウザメのエラに詰まったビーズ状の塵でした。
これは、衝突によって巻き上げられた溶岩が空中で球状になり、その後、再び地面に落ちてきたものです。
チョウザメは水中に落ちてきた塵を水とともに飲み込んだと見られます。
また、木の樹脂から回収された2つの粒子には、地球外から飛来したことを示す小さな含有物が認められました。
デパルマ氏の指導教官であるフィル・マニング(Phil Manning)教授は「その物質の化学組成を分析したところ、すべての化学的データが、恐竜を絶滅させた隕石の破片であることを示していました」と述べています。
そして一番の大物は、ウロコ状の皮膚を残している恐竜の脚の化石です。
これを次に見ていきましょう。