せっかく提供された臓器も「不合格」になることがある
現在における臓器移植の最大の問題は、提供される臓器が圧倒的に不足している点にあります。
この不足は、臓器提供の意思を示してくれる人数の絶対的な不足に加えて、提供された臓器の質も大きく影響していました。
例えば臓器に少しでも腫瘍の形跡が確認された場合、良性か悪性の判断をされる前に不適格とみなされ廃棄されてしまいます。
既存の技術では臓器を体外で維持できる時間は12時間前後と限られているため、腫瘍の判定を行う時間的猶予がないからです。
また提供された臓器が物理的に損傷していたり細菌感染している場合も「不良品」とみなされ、廃棄の対象になえます。
臓器移植は発展途上の技術であり不確実性も高いため、移植にGOサインが下される臓器は健康上の問題がない「優良品」に限られていたからです。
そのため、ただでさえ少ない臓器がさらに絞られて、多くの人々の命が失われていました。
そこで今回、チューリッヒ大学の研究者たちは移植可能な臓器を増やすために「不良品」とされた臓器を長期保存すると同時に、体外で治療する技術を開発することにしました。
(注:次ページはチューブにつながれた臓器の写真があります)