多くの人は「指摘されたいけど、したくない」と感じている
次に研究チームは、1984名の参加者を対象に、問題を指摘する側とされる側が、そのことについてどう感じているか調査することにしました。
ここで一つ大切なポイントは、ここでいう指摘が相手のためを思った建設的な意見であるということです。
そのため、「気に入らない」「イライラする」といった嫌悪感や、自分を優位に立たせることを動機とした指摘は調査の対象とはなりません。
さて職場を想定したシミュレーションでは、「自分が同僚からの指摘をどれほど求めているか」「同僚は自分からの指摘をどれくらい必要としているか」考えてもらいました。
その結果、指摘を与える側と受ける側には大きなすれ違いがあると分かりました。
ほとんどの人が、「自分は同僚から指摘してもらいたいが、同僚には自分の指摘など必要ない」と感じていたのです。
アビエスバー氏によると、「このギャップは、日常的で重要でないシナリオでは小さく、逆により重大な問題においては大きくなった」と付け加えています。
レポートの内容に間違いがあるとか、電子メールの文章がおかしい、といった社会的にも重要度の高そうなミスに対して、相手は自分の指摘を必要としていないだろうと考える人が多かったのです。
逆に、顔に食べ物がついているとか、チャックが開いているなどのちょっとした問題については、相手は指摘してほしいだろうな、と認識している人が多かったようです。
ただいずれの場合も、自分自身に当てはめて考えた場合、他人に指摘してほしいと考える人がほとんどでした。
つまり、自分のことならちゃんと相手に言ってほしいと考えるのに、相手はそれほど指摘してほしいとは思ってないだろうと考えるのが、多くの人たちで一致した認識だったのです。
また友人、ルームメイト、恋人同士を対象としたシミュレーション実験でも同様に、相手の意志に反して「相手は自分の指摘など必要ない」と感じてしまうことが多かったようです。
深い関係にある人たちでさえ、指摘に関するすれ違いは生まれていたのです。