「サル痘」ってどんな病気?
サル痘は、サル痘ウイルスへの感染で発症する急性の発疹性疾患です。
おもに、アフリカ大陸の熱帯雨林に生息するげっ歯類(ネズミやリス)が自然宿主となっており、それらに噛まれたり、感染個体の血液や体液、発疹部位に触れることで伝染します。
人から人への場合は、患者との直接的な接触(血液・体液・発疹部位への接触、および性行為を含む)、近距離での飛沫への曝露、患者の使用した衣服や寝具に触れることで感染します。
潜伏期間は、およそ7〜14日(最大幅は5〜21日)とされ、発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛、リンパ節腫張が0〜5日ほど続いた後、発疹があらわれます。
発疹は一般に、顔から始まって全身に広がります。
発疹は徐々に水ぶくれに変わり、破裂後にかさぶたとなって、だいたい2〜4週間で治癒します。
基本的には軽症で済みますが、肺炎や敗血症を併発するケースもあり、妊婦や幼児が感染すると、重症化する危険性もあるとのこと。
感染者の98%が「男性同士の性行為」によるもの
一方で、今回の世界的な感染拡大は、従来のサル痘の広がり方とは少し様子が違うといいます。
WHOの報告によると、感染者のほぼ全員が男性で、かつ男性同士の性的接触が原因となっていたのです。
英ロンドン大学クイーン・メアリー校(QMUL)らの国際医学研究チームは、このほど、2022年4月27日から6月24日の間に、16カ国43施設で診断された528人のサル痘患者を調査。
対象となったのは、アメリカ大陸の患者が84人(16%)、ヨーロッパ、イスラエル、オーストラリアの患者が444人(84%)で、75%が白人、年齢の中央値は38歳(18〜68歳)となっています。
分析の結果(New England Journal of Medicine, 2022)、感染者の実に98%がゲイまたはバイセクシャルの男性であると判明したのです。
また、そのうちの41%は、性的接触によるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも感染していました。
感染者の95%に、男性同士の性的接触が確認されており、症状としては、95%が発疹、73%が性器病変、41%が粘膜病変を発症しています。
発疹に先行する全身症状としては、発熱(62%)、筋肉痛(31%)、頭痛(27%)、リンパ節腫脹(56%)でした。
以上の結果から、現在流行しているサル痘は「男性同士の性行為」が主要な感染経路になっていると結論されます。
また、今回のケースでは、発熱なしに発疹が出る事例が多く、知らぬ間に他人にうつしてしまう危険性もあるようです。
患部に激しい痛みを伴うことが多いようですが、重症化する患者はほぼおらず、アフリカ以外では死者はまだ出ていません。
専門家は、重症化ケースが少ない理由について、感染者の多くが比較的若い成人男性だからだと考えています。
しかし、だからと言って、それ以外の人がまったく感染しないとは限りません。
次ページでは、予防法からワクチンの有無、また、WHOが”ウイルスと同等に懸念するもの”について話します。