「天然痘ワクチン」が有効、「手洗い・うがい」も予防効果あり
ここまで研究報告を聞くと、サル痘はほとんどの人には関係のない性病のような印象を受けてしまいますが、決してそういうことではありません。
今回の研究が報告している感染経路は、男性同士の性的接触がほとんどを占めるものの、欧州や欧米では、女性や小児の患者も確認されています。
サル痘は、感染者との直接および間接的(衣服や寝具)な接触、近距離での飛沫への曝露も感染経路となるため、「性的接触をしなければ絶対安心」とは言えません。
日本でも初の感染者が確認され大きく報道されています。
患者は、都内在住の30代男性で、6月に欧州への渡航歴があり、帰国後の今月15日に症状を発症、25日に病院を受診し、サル痘と診断されています。
(この間の濃厚接触者は現在調査中とのこと)
また、渡航先にて、のちにサル痘と診断された人物との接触があったことも確認されました。
今後の感染拡大を不安視する声もあると思いますが、感染者の飛沫は、周囲の物や環境に付着することから、「コロナ対策と同様、マスクの着用、手洗い、うがい、手指の消毒が有効である」と専門家は指摘します。
サル痘は、やはり皮膚や患部との直接接触がもっとも感染リスクが高いため、飛沫に対しては、日頃の衛生対策を徹底していれば、感染リスクはかなり抑えられると言われています。
それから、サル痘の予防については「天然痘ワクチンが有効である」と報告されています。
ワクチン接種による予防効果は85%に達し、ウイルスへの曝露から4日以内の摂取で「感染予防効果」が、4〜14日以内の摂取で「重症化予防効果」があるとのこと。
天然痘ワクチンは日本にも十分量が用意されており、東京・国立国際医療研究センター病院はすでに、男性患者との家族や接触者を対象に、摂取できる体制を整えています。
また今月29日には、天然痘ワクチンをサル痘のワクチンとして承認するかどうかが、専門家会議にて話し合われる予定です。
しかし、こうした具体的な予防策の一方で、WHOは、患者やその親族への「差別」を引き起こす可能性を懸念しています。
今回判明した調査結果は、男性の性的少数者への非難や攻撃を誘引しかねないものです。
テドロス・アダノムWHO事務局長は、声明にてこう述べています。
「コミュニティーの人々の健康と人権、尊厳を守る措置をとることが不可欠になります。
偏見と差別はあらゆるウイルスと同等の危険性をはらんでいるのです」