スピネルってどんな鉱物?
スピネルの名前の由来
スピネルとは、酸素とマグネシウム、アルミニウムが組み合わさってできた「酸化鉱物」の一種です。
スピネルという名前は、ラテン語で「小さな棘」を指す「スピナ(spina)」に由来しています。
結晶が正八面体の形をしており、まるで小さな棘のように見えるため、このような名前が付けられました。
和名も、その形状に由来した「尖晶石(せんしょうせき)」という名前です。
スピネルの主な産地はミャンマーです。
他にもベトナム、タジキスタン、タンザニア、スリランカなどが有名な産地ですね。
実は1つの鉱物ではない!スピネルのグループ
また「スピネル」とは、実は1つの鉱物の名前ではありません。
「スピネルグループ」と呼ばれる、特定の結晶構造と化学式を持った鉱物を指す言葉です。
含まれる成分によって「アルミニウム・スピネルグループ」「クロム鉄鉱(クロム)・スピネルグループ」「磁鉄鉱(鉄)・スピネルグループ」の3つに大きく分けられます。
また、自然界に存在するスピネルのほとんどは、それら3つのグループが2つ以上混じり合ってできています。
そのため、代表的なレッドスピネル以外にも、ブラックスピネルやブルースピネル、ピンクスピネルなどカラーバリエーションも豊富です。
スピネルは、鉱物的な特徴を知るだけでも、非常に奥深い鉱物なのです。
鉱物としてのスピネル
鉱物名 | スピネル(spinel) |
化学式 | MgAl2O4 |
結晶系 | 等軸晶系 |
へき開 | なし |
モース硬度 | 7.5~8 |
光沢 | ガラス光沢 |
条痕 | 白 |
結晶系が強く出ている個体は、研磨されたかのような正八面体の形をしていることが特徴です。
「神によって研磨された石」と呼ばれたスピネル
自然物でありながら、美しい正八面体の結晶をしているスピネル。
スピネルの主要産地として有名なミャンマーの鉱夫は、完璧な正八面体の形をしたスピネルを「アニ・アン・ナト・トゥエ(anyan nat thwe)」と呼ぶそうです。
これは「神によって研磨された石」という意味です。
人為的に作られたわけでもないのに、人間を惹きつける均整の取れた美しい形をしているスピネルに、人ならざる者の大いなる存在を感じ取ったのでしょう。
「エンジェルカット」という愛称もあるのですが、筆者はどちらかと言えば「アニ・アン・ナト・トゥエ」という言葉の響きの方に、強い神秘性を感じます。
「ダビデの星」と呼ばれるスピネル
スピネルの結晶の形の魅力は1つだけではありません。
鉱物の結晶には、まれに「双晶」と呼ばれる、単結晶が一定の角度で規則的にくっついて形成されることがあります。
宝石を擬人化した漫画である「宝石の国」にも双晶のアメジストが登場するため、それで存在を知った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
スピネルの場合、結晶の上下が逆方向にくっつくことで、まるで六芒星(ヘキサグラム)のような形になることがあります。
そのようなスピネルは「ダビデの星」と呼ばれ、スピネルファンの中では高い人気を誇ります。
希少性が高く、市場にあまり出回ることがないため、筆者もまだ「これだ!」と思えるダビデの星に出会ったことはないのですが、いつかお迎えしたい宝石の一つです。