レーザーの出力を変えて、気絶や進行方向の操作も可能!
ゴキブリ退治の製品は、すでに多くの種類が市販されていますが、効果の程はさまざまです。
家庭用としては現在、粘着トラップや化学物質を用いた殺虫剤、ブラックキャップが普及しています。
しかし、粘着トラップは範囲が狭く、化学物質はペットや環境に対して有害であったり、ゴキブリが耐性を持つ可能性などが指摘されています。
そこで研究チームは、これらの問題点に対し、レーザービームによる駆除という全く新しいアプローチを取りました。
システムを考案した研究主任のイルダー・ラフマトゥリン(Ildar Rakhmatulin)氏は、以前からレーザービームを用いた殺虫(おもに蚊)の研究を続けています。
今回の取り組みでは、先の装置に手を加え、ゴキブリ用に改良を試みました。
部品はすべて手頃な価格の既製品を使っており、設計もいたってシンプルです。
まず、AIの機械学習ソフトウェアが動作する小型電子機器・Jetson Nanoを用意。
これに、ゴキブリの位置を検出するための2台のカメラとガルバノメーター、そして調整可能なレーザー機器を設置しました。
ガルバノメーターは、AIユニットからのデータを受け取り、その信号にもとづいてレーザーの向きを変えるためのものです。
また、検出用のカメラは、1.2メートルの範囲内でゴキブリを自動認識します。
デバイスのプロトタイプが完成すると、チームはラボ内でテストを行いました。
その結果、高い精度でゴキブリを識別し、レーザービームを照射して駆除できることが実証されました。
加えて、レーザービームの出力を微調整することで、駆除の他に、多様な種類の操作を実現しています。
たとえば、レーザーを低出力で照射すると、ゴキブリの進行方向を自在にコントロールすることができました。
これを使えば、ゴキブリを暗い隠れ家からおびき寄せたり、追いやることができるでしょう。
こちらはレーザービームで、ゴキブリを検出し、向きを変える実験の様子です。
さらに、レーザービームの出力を少し上げると、殺しはしないまでも、スタンガンのように気絶させることも可能です。
そしてレーザーを殺傷用に設定すれば、文字通り、あの世へ送ることができます。
ラフマトゥリン氏は、このデバイスについて、「選択的で環境にやさしく、新たな害虫駆除システムとして非常に有望です」と話します。
また、「レーザーは調整可能なので、他にも、蚊やハエ、スズメバチなどを追い払ったり、害虫を農作物や貯蔵物に寄生させないようにする手段としても応用できるでしょう」と述べています。
ただし、今のところ、このデバイスを一般向けに商品化する予定はないという。
「現段階で、このシステムは家庭用に適していません。使用するレーザーは目にあたると、深刻なダメージを与えたり、場合によっては失明の危険性もあります。
家にゴキブリが出る人には申し訳ないですが、今はまだ有効な解決策とはならないでしょう」
このように、ラフマトゥリン氏は話します。
一方で、プロトタイプの作製に使用した部品や作り方、使用方法は「GitHub(英語)」にて無料公開しており、製作費用はだいたい250ドル(約3万6000円)かかるとのこと。
もし「作ってみよう」と考えている方がいれば、使用には十分気をつけてください。