当初の予想を大幅に上回る成果が!
本ミッションのターゲットとなった小惑星「ディモルフォス(Dimorphos)」は、直径160メートル程のサイズで、直径780メートルの小惑星「ディディモス(65803 Didymos)」の周りを約11時間55分周期で公転していました。
ミッションチームの目標は、探査機の衝突により、このディモルフォスの公転周期を遅らせることにあります。
当初の計画では、約73秒遅らせることができれば成功とみなされ、その変化は最大で約10分に及ぶ可能性も指摘されていました。
しかし、9月26日の東部標準時午後7時14分(日本時間9月27日午前8時14分)のミッション実行から約2週間の追跡調査で、驚くべき結果が明らかになっています。
NASAの報告によると、約11時間55分の公転周期は、なんと11時間23分にまで短縮したことが判明したのです。
ディモルフォスの公転周期を32分も縮めたことは、当初の最低成功基準(73秒)を25倍以上も上回ったことを示し、さらに、最大予想の10分よりもはるかに大きな成果となりました。
こちらは、DART探査機がディモルフォスに衝突する瞬間を捉えた映像です。
NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は「私たちは、このDARTミッションが地球を防衛する手段として有効であることを世界に示しました」と話します。
ディディモスとディモルフォスの二重小惑星は、地球に接近して衝突する可能性のある「潜在的に危険な小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)」に分類されていますが、今のところ、その軌道が地球軌道と交差することはなく、実際的な脅威とはなっていません。
それでも今回の結果は、DARTミッションが、PHAの軌道をズラすことで、地球への衝突を防ぐ効果的な手段となりうることを実証しています。
さらにNASAは、10月8日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影したディモルフォスの画像を新たに公開しました。
これは、ミッションから約285時間後のディモルフォスの様子で、衝突の影響により、その表面から破片が噴出して、彗星の尾のようなものを形成しているのがわかります。
NASAによると、太陽系にある数十億個もの小惑星や彗星のうち、地球に危険を及ぼす可能性のあるものはほとんどなく、「少なくとも今後100年の間に地球への衝突イベントが起こることはない」と予想しています。
しかし、長い間待っていれば、その時は必ずやって来るでしょう。
実際、約6600万年前の白亜紀末に、巨大なチクシュルーブ隕石がメキシコ・ユカタン半島に衝突し、恐竜を含む全生物の75%を絶滅させました。
その来たるべき時までに、このDART技術をさらにブラッシュアップさせて、恐竜たちと同じ悲劇を繰り返さないようにしなければなりません。
ミッションチームは現在、衝突前にDART探査機から切り離された、イタリア宇宙機関(ASI)の小型探査機「LICIACube」による撮影を続けており、衝突後のディモルフォスの質量や形状を研究しています。
また、約4年後に計画されている、欧州宇宙機関(ESA)の「ヘラ(Hera)」プロジェクトにより、ディモルフォスの詳細な探査を行い、衝突後のクレーターや正確な質量を測定する予定です。
DART計画の詳細な説明はこちらから。