ミツバチの「心の数直線」
どうやってミツバチが人間と同じ精神構造(心の数直線)を持っているかを調べるか?
研究はまず、ミツバチに砂糖水の「ご褒美」を与えることからはじめられました。
ただ、砂糖水が置かれた近くの壁に、ちょっとした細工が施されていました。
といっても複雑なものではなく壁に「◆」「◆◆◆」「◆◆◆◆◆」のように四角などの図形などを1個、3個、5個と描いただけのものになります。
そしてミツバチたちは3つのグループにわけれられ、それぞれの壁の印がある場所で砂糖水を与えられました。
これにより、たとえば1つの四角「◆」の近くで砂糖水を飲むんだ経験のあるミツバチは、同じ条件で実験を行ったときも、砂糖水を欲しがって1つの四角を目指して飛ぶようになります。
同様に3つの四角、5つの四角で訓練されたミツバチたちも、それぞれの印がある場所に優先的に向かうようになりました。
これまでの研究によりミツバチには物体の数を認識する能力が証明されています。
そのためミツバチは壁に描かれた四角の数と砂糖水のご褒美の関係を学ぶことができたのです。
ですが面白いのはここからです。
次に研究者たちは、それぞれの四角の数で学習を行ったミツバチに、学習に使わなかった四角の数をみせました。
つまり3つの四角のある場所に砂糖水があると学習したミツバチたちに、1つの四角や5つの四角をみせたわけです。
一見すると、意味のない実験に思えます。
3つの四角が描かれた場所に砂糖水があると学んだミツバチに、1つの四角や5つの四角をみせたところで、無視されるだけかもしれないからです。
しかし違いました。
3つの四角が描かれた場所に砂糖水があると学んだミツバチは、より小さな数である2つの四角を見せると76%左側に飛び、より大きな数である5つの四角を見せた場合には76%が右側に飛ぶことが判明したのです。
また1つの四角の場所に砂糖水があると学んだミツバチは、何も印がない場合はランダムに飛びますが、より大きな数である3つの四角を見た場合には72%が右側に飛びました。
5つの四角の場所に砂糖水があると学んだミツバチも何も印がない場合にはやはりランダムな方向に飛びますが、より小さな数である3つの四角を見せた場合には73%が左側に飛びました。
つまりミツバチたちは学んだ四角の数を基準にして、基準となる四角の数より小さい数をみたときには左に、大きい数をみたときには右に、砂糖水を求めて飛んだのです。
この結果は、無脊椎動物であるミツバチも、小さい数を左側に関連付け、大きい数を右側に関連付ける、人間と同じ精神構造「心の数直線」を持つ可能性を示します。
そうなると気になるのが「なぜ地球の動物は、数値の大小と左右が結びついているのか?」です。