一人暮らしの孤独感は「うつ病」を招きやすい?
心理学者によると、孤独(Loneliness)は「理想としていた人間関係と実際に達成された人間関係との間に乖離がある状態」を指すという。
また孤独には、知人や友人がいない「社会的孤独」と、知人はいても満足のいく親密な関係が築けない「感情的孤独」の2つがあるといいます。
こうした孤独感は、ソーシャルメディアの利用拡大や過剰支出の増加から、身体の健康(心臓病・脳卒中・糖尿病)および精神の健康(うつ病・感情調節の障害)の危険因子となることが指摘されていました。
そして、この孤独感を最も高めやすいのが「一人暮らし」です。
特にここ2〜3年はパンデミックの影響で、家族や友人、恋人がいる人でも一人で過ごす時間が増えており、孤独感を抱える人々の増加が懸念されています。
そこで本研究チームは、一人暮らしと精神疾患の関連性を調べるため、2022年5月までに発表された2056件の先行研究を集め、メタアナリシスを行いました。
対象とされた被験者数は12万3859人(精神病歴なし)で、うち65%が女性でした。
データ分析の結果、一人暮らしは、複数人で暮らす場合と比較して、うつ病の発症リスクが42%も高いことが判明したのです。
特にその傾向は、女性よりも男性で、若い人よりも高齢者で、都市部よりも地方に住む人で顕著であることが分かりました。
では、なぜ一人暮らしをするとうつ病のリスクが高まるのでしょうか?
それには様々な原因が考えられますが、研究チームは「一人暮らしは、家族やパートナーと一緒に暮らしている人に比べ、経済状況が悪い、社会的接触や支援が少ない、生活習慣が乱れている、心身の健康状態が悪い」などの点を挙げています。
こうした要因はどれも、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を低下させ、社会的孤立や孤独感が増幅し、うつ病の発症リスクを高めるものです。
またQOLの低下はうつ病だけでなく、心血管疾患や脳卒中、高血圧、ぜんそく、関節炎といった身体の健康問題の増加とつながることも先行研究から明らかになっています。
しかし一方で、一人暮らしの孤独感は、自助努力で十分に対処しうる問題です。
たとえば、生活習慣の改善や適度な運動によって基本となるQOLを高めたり、マインドフルネス(瞑想)を取り入れることで、孤立感にともなうストレスを軽減できます。
孤独ゆえに感じるストレスは自覚しづらい面もあるかもしれません。
そのためダイエットや検定など達成できる目標を持ったり、ペットを飼うことで孤独感を払拭することが効果的です。
本物のペットを飼うことが難しければ、ロボットペットでも癒しの効果が得られるかもしれません。
一人暮らしがうつ病のリスクを高めるとはいえ、インドア生活の工夫次第で、一人時間も快適なものに変えられるでしょう。