瞑想は「慢性的なストレス」を緩和しうるか?
瞑想は、ちょっとした隙間時間にできる最良のメンタルトレーニングです。
ニューヨーク州立大学(SUNY)の先行研究(Scientific Reports, 2021)では、1日10~15分の瞑想を8週間続けることで、脳のオン・オフの切り替えスピードが増すことが証明されています。
こうした変化は、外部からの刺激や体の感覚を遮断する特異な状態に、脳が適応することで生じるとされます。
瞑想を継続することで、神経活動パターンが再編成され、場合によっては灰白質(かいはくしつ)の密度増加など、脳の構造そのものが変化します。
その一方で、瞑想トレーニングが、長期的なストレス負荷に対してどのような効果をもたらすのか、正確には分かっていません。
本研究主任の一人で、マックスプランク協会・社会神経科学研究室(Social Neuroscience Lab at the Max Planck Society・独)のタニア・シンガー氏は、次のように話します。
「心身のストレス負荷による疾患の増加にともない、慢性的ストレスは今や、21世紀の主要な健康リスクの一つとして認識されるようになりました。
ストレスへの曝露によって生じる健康問題は、主に二つの神経内分泌系の長期的な活性化によって媒介されます。
一つは交感神経-副腎-髄質系で、もう一つは視床下部-下垂体-副腎系です。
この二つのシステムは、免疫や代謝のプロセスに複雑な影響を及ぼし、心血管障害、代謝障害、自己免疫疾患などの発症に関与しています」
そこで研究チームは、長期的なストレスに対する瞑想の効果を調べるため、ボランティアを募って調査を行いました。