獣脚類の新種恐竜は潜水して獲物を捕まえていた
新しくモンゴルで発見された化石(約7100~7200万年前と推定)は、ほぼ完全な骨格化石であり、頭蓋骨、脊柱、前肢1本、後肢2本が含まれていました。
分析の結果、この恐竜は新種であることが判明し、「Natovenator polydontus(ナトベナトル・ポリドントゥス)」と名付けられました。
この新種恐竜の属名は、ラテン語の「泳ぐ(nato)」と「狩人(venator)」に由来しており、種小名「polydontus」は、ギリシャ語で「多くの歯」を意味します。
この名前が示す通り、N.polydontusはペンギンのように潜水して獲物を捕らえていたと考えられます。
非鳥類型獣脚類(二足歩行する肉食恐竜の一種)でありながら浅い水域で生活し、時には潜って小魚を食べていたというのです。
N.polydontusの特性を知るための有力な手がかりの1つが「肋骨の向き」です。
陸上の獣脚類では、肋骨が背骨からほぼ水平に弧を描くように伸びています。
しかしN.polydontusでは、この肋骨が尾の方に湾曲していました。
このような後ろ向きの肋骨は、現代の潜水性の鳥類の特徴と一致しており、このことからN.polydontusは、流線型の体をもっていたと考えられます。
流線型の体は水中での抵抗を減らし、効率よく泳ぐのに役立ったはずです。
また歯の形状やその数が非常に多いことから、魚や昆虫を捕食していたと考えられています。
さらにリー氏は、「N.polydontusはアヒルのように小さく、泳ぐときにはおそらく前肢を使ったのだろう」と推測しています。
ちなみに今回の発見は、以前に発掘された獣脚類ハルシュカプラトル(学名:Halszkaraptor)にも光を当てるものとなりました。
古生物学者たちは長年、「ハルシュカプラトルは水生捕食者であり、水棲と陸棲の両方に適応していた」という説に関して議論を重ねてきており、決定的な証拠は出ていないままでした。
しかし今回の解析により、N.polydontusは、ハルシュカプラトルの近縁種であると判明。
リー氏は、「N.polydontusの頭蓋骨、歯、首、手足がハルシュカプラトルのそれと似ており、おそらくこの2種が同等の生活をしていた」と報告したのです。
N.polydontusのほぼ完全な化石は、「ハルシュカプラトルの水生捕食者」説を支持するものとなったのです。
また彼は、「N.polydontusは、恐竜の生態がいかに多様だったかを示す貴重な証拠であり、恐竜のライフスタイルに対する我々の偏見を変える可能性があります」と付け加えました。
もしかしたら既に知られている恐竜たちも、私たちの想像を超えた多様性に満ちていたのかもしれませんね。