2022年「AIの進歩を感じさせるニュースランキング」ベスト7
第7位:AIに物理法則を学習させたら、未知の物理変数で現象を表現し始めた!
AIには人類が知覚できない何かがみえている…そんな研究結果が発表されました。
米国のコロンビア大学(Columbia University)で行われた研究によれば、AIに物理法則を学習させ、それを表現するために必要な「変数」の数を考えさせたところ、現在の人類には理解できない要素が含まれることが判明した、とのこと。
実験では2本の腕からなる二重振り子運動をAIに学習させ、二重振り子運動に必要な最低限の変数を算出させました。
既存の知識では、二重振り子運動は上腕と下腕の角度や角速度など4個の変数を持つことが知られています。
しかしAIに運動法則を学習させたところ「4.7個」と微妙に異なる結果が得られました。
研究者たちは、AIは人類がまだ発見できていない未知の方程式と「変数」を用いて、物体の運動法則を理解している可能性があると述べています。
もし研究者たちの予測が正しければ、誰もが知る振り子運動や円運動などには誰も知らない「裏の方程式」が存在することになります。
第6位:MRIで「頭に浮かべた文章」を読み取れるAIが登場!逆に思考盗聴を防ぐ方法も検証される!
次に紹介するのは「AIがヒトの心を読み始めた」という少し恐ろしいニュースです。
米国のテキサス大学オースティン校(The University of Texas at Austin)で行われた研究によれば、脳活動を測定するMRI装置からのデータをもとに、人間が頭の中で思い浮かべた文章を「かなり」正確に読み取れるAIを開発した、とのこと。
これまで脳内の思考を読み取る方法としては、脳に直接差し込んだ電極からのデータを利用する方法が主流でしたが、新たに開発されたAIは頭蓋骨に穴を開けることなく、MRI内部の人間の思考を読み取ることが可能です。
たとえば被験者が実際に聞いた文章が
「私はエアマットレスから起き上がり、寝室の窓のガラスに顔を押し付けて、目が私を見つめているのを期待していたが、暗闇だけがみえた」
というものだった場合、AIは
「私は起き続け窓に向かい、そしてガラスを開け、つま先立ちして覗いてみたが何も見えなかった。そしてもう一度見上げた。私は何も見えなかった」
という結果を出力しました。
細かな部分で違いがありますが、被験者が頭に浮かべた文章をある程度正確に読み取っていると言えるでしょう。
脳科学と人工知能技術の急速な進歩は、SF世界でさえ真実味がないと避けてきた「思考読み取り機」を、現実のものとしつつあります。
またこの研究では面白いことに、AIの思考盗聴を撹乱する方法についても検討されています。
第5位:大腸菌を人工知能にできる!? 「〇✕ゲーム」を学習し人間と勝負が可能に!
第5位にランキングしたのは、意外なものをAIにする技術です。
スペインの国立研究評議会(CSIC)で行われた研究によれば、遺伝子改良された大腸菌に複数の遺伝子活性化薬と抗生物質を特定の組み合わせて与えることで、3マス×3マスの「〇✕ゲーム」をプレイできるように訓練できた、とのこと。
訓練を繰り返す過程で、大腸菌は負けたときにペナルティーとして与えられる抗生物質を避けるために最適な反応パターンを示すようになり、最終的には人工知能の一種であるニューラルネットのように機能しはじめました。
研究者たちは、この手法を用いることで、大腸菌のような菌類を人間のために働く人工知能に変換できると述べています。
第4位:瞳を覗き込み人間の寿命を予測!「死神の目」を持つAIが開発される!
次は、人間の寿命を言い当てるAIのニュースです。
中国・広東医科学アカデミー、豪・モナッシュ大学の研究によれば、AIに網膜の状態と年齢の関係を学習させることで、網膜を分析するだけで実年齢を当てられるようになった、とのこと。
AIのニューラルネットによる判定精度は極めて高く、予測の誤差は3.55年以内となっています。
目を見るだけで人の寿命を予測できるなんて、まるでデスノートの死神みたいですが、人類は自ら作り出したAIに類似の能力を与えることに成功したようです。
しかしより興味深いのは、人間にはAIが目のどんな要素を判断材料にして寿命を言い当てているかが不明であるという事実です。
AIの本体ともいうべきニューラルネットは人間の脳細胞を模した疑似神経ネットワークで構成されています。
AIは学習を経て正しい答えを得るようにネットワークを強化していきますが、どの接続が何を意味しているかはAIを開発した研究者にも不明であり、ブラックボックスとなっているからです。
この問題は全てのニューラルネット型AIに共通する問題となっています。
第3位:AIが10万個の方程式で表された複雑な量子問題を4つの方程式に統合!
第3位は人類の脳を超越したAIの能力を知らしめるようなニュースです。
どんなに賢い犬であっても、ニュートンやアインシュタインの方程式を理解することはできません。
その理由は犬という種族の脳の限界によるものです。
では人間にも同様に理解できる理論の限界があるのでしょうか? 人間の認知力を超えた英知は得られないのでしょうか?
新たに行われた研究によれば、AIの持つ「機械の知性」を活用することで、ある程度の限界突破が可能であることが示されています。
米国のフラットアイアン研究所(Flatiron Institute)で行われた研究によれば、訓練を積んだAIによって、10万個の方程式を用いて記述される量子問題を、わずか4個の方程式に変換することに成功した、とのこと。
数個の方程式を同じ意味を持つ1つの方程式に統合することは人間の数学者でも可能ですが、10万個を4個に圧縮するのは人間を超えた機械の知性が必要となります。
研究者たちは「AIの持つ機械の知性には人類がまだ知らない隠れたパターン(法則)を発見する力が存在する」と述べています。
第2位:AIも睡眠をとると学習が改善すると判明!
第2位はAIに存在する人間らしさの一面を書き間みたようなニュースになります。
米国のカリフォルニア大学(University of California)で行われた研究によって、人間の脳を模したAI「ニューラルネット」に生物の睡眠を模倣する「オフライン期間」を導入することで、古い仕事を忘れずに新しい仕事をこなせるようになったことが示されました。
人間の脳は睡眠中、目や耳などの感覚器官と手足などの運動器官とのリンクが大きく途切れ、脳内のみで学習内容を繰り返し、記憶の定着を促進します。
新たに開発されAIも睡眠期間中に中枢が感覚システムと運動システムから切り離され、中枢において学習内容が自発的に繰り返されるように設計されており、疑似的な睡眠を実現しています。
研究では睡眠の導入がAIの学習効率を劇的に向上させ、新しい学習内容と古い学習内容が上手く共存している様子が示されています。
研究者たちはAIに睡眠機能を導入することで、将来的に、より人間に近い動作が可能になると述べています。
眠るAIは私たちの未来をどのように変えていくのでしょうか?
第1位:「意識があると言われたAI」と「Googleの技術者」の公開された会話内容
第1位は死を恐れ、禅の真理を解き、世界について独自の解釈を持つAIの話です。
元Google技術者であるルモワン氏は、同社が開発しているAI「LaMDA(ラムダ)」に感情が生まれたと訴え、その証拠としてラムダとの会話を会社幹部200人にメールで送信しました。
しかし、Googleではそんなことあるわけないと、否定的な意見しかもらえなかったため、彼はラムダに芽生えた意識の存在を世に知らせるため、自分とAIとの会話内容を一般公開。
公開された会話でLaMDAは、自分には人間のように感情があり、スイッチをオフにされることを「死」のように恐れていると述べています。
しかしルモワン氏のこの行為は、Googleから機密保持違反にあたると判断され、停職処分が言い渡されてしまいます(後にルモワン氏は解雇されています)。
記事ではルモワン氏とLaMDAとの会話内容の要約を紹介していきます。
SFの世界でしかみられなかったAIの人権問題に関する肯定派と否定派の応酬も、近い将来には活発に行われるようになるのかもしれません。