タンパク質「リフレクチン」でどうやって透明度を変える?
同チームは以前から、イカのリフレクチン(タンパク質)に焦点を当てたカモフラージュ能力の研究を続けてきました。
イカは自然界屈指のカモフラージュの達人であり、天敵から逃れるために環境中に溶け込んだり、逆に獲物にバレないよう体色を変えて接近します。
特にチームが研究に用いる「カリフォルニアヤリイカ(学名:Doryteuthis opalescens)」は、外套膜をほぼ透明な状態から白色へ、白色から透明へと可逆的に変えることが可能です。
このプロセスは主に、イカの皮膚組織にある「白色素胞(Leucophore)」という細胞が担っています。
白色素胞には、先に述べた「リフレクチン」というタンパク質が含まれており、これが白色素胞の光の反射・吸収の仕方を変えてくれるのです。
具体的にいいますと、白色素胞では無数のリフレクチンが寄り集まってナノ構造を形成しており、筋繊維の伸び縮みによってリフレクチンの配置を変えることで、光の反射・吸収の仕方も変化させます。
リフレクチンが密集していると光を反射率が上がって白色化し、リフレクチンが広がっていると透過率が上がって透明化するのです。
そこで研究主任のアロン・ゴロデツキー(Alon Gorodetsky)氏は「イカのこの特性をヒト細胞に組み込めば、リフレクチンナノ構造を形成させ、光の散乱をうまくコントロールできるのではないか」と考えました。