現実で使用された有名な「自白剤」
自白剤として特に有名なのは、「チオペンタール」と呼ばれる麻酔薬です。
体が脳に情報を伝達するプロセスを遅らせる中枢神経系の抑制剤として働きます。
静脈注射により、鎮静・催眠・筋弛緩・血圧低下などの効果を示します。
使用者はチオペンタールを服用してから30~45秒で気絶するため、日本では全身麻酔の導入などに広く使用されています。
アメリカでは死刑執行時に意識を無くす薬として知られていますが、現在ではメーカーの製造停止により入手が困難になっています。
そして2007年にはチオペンタールを自白剤として使用したとの報告があります。
インドのニューデリー警察が、子供たちを誘拐し殺害する「ノイダ連続殺人事件」の容疑者たちにチオペンタールを使用し、容疑者たちは薬の影響下でその罪を自白したと言われています。
ただし、この結果だけではチオペンタールに自白剤としての効果がどれほどあるのか分かりません。
2013年には、テレビジャーナリストのマイケル・モーズリー氏が自らの体で実験しました。
彼は麻酔医に協力してもらい、チオペンタールを投与されても、嘘をつき続けられるか検証したのです。
1回目の投与後1分もたたないうちに彼は「シャンパンを飲んでいるかのような気分だ」と笑い出しました。
そして自身の職業について尋ねられると、「世界的に有名な心臓外科医だ」と嘘をつくことができました。
ところが2回目の大量投与後、モーズリー氏は同じ質問に対して「テレビのプロデューサーだ」と真実を答えてしまいまい、その後は眠りに落ちてしまいました。
実験後にモーズリー氏は、「質問された時、嘘をつくことさえ思いつかなかった」と説明しています。
この実験からは、チオペンタールが判断力を低下させることで自白剤としていくらか利用できる可能性が示されています。