「同じ失敗を繰り返さない」マウスは、失敗後に特定のニューロンが活性化していた
この実験では、マウスがスクリーンに表示された2つの画像から1つを選ぶ課題を何度も続けて行いました。
その際、片方の「ランダムに表示される画像」を選んだ場合には報酬が得られ、もう片方の「固定画像」を選んだ場合には報酬が得られません。
つまりマウスは実験中、「固定画像を選ぶと報酬が得られない」という失敗から学び、「ランダムな画像を選んで報酬を得る」という成功体験に繋げていくのです。
そして研究チームは、この時のマウスの脳内活動を調査しました。
その結果、脳のやる気や行動選択に重要な領域「側坐核」の「ドーパミンD2受容体発現ニューロン(以下D2ニューロン)」が、失敗した直後に素早く活性化するのを発見しました。
しかも失敗直後のD2ニューロンの活性化を抑制した実験では、マウスは学習することなく、同じ失敗を繰り返してしまうことも分かりました。
つまり失敗を繰り返さないためには、失敗直後にD2ニューロンが活性化することが必要だったのです。
同様の脳内メカニズムは、人間の脳内でも生じている可能性があります。
今回の研究を応用することで、将来的に「同じ失敗を繰り返してしまう人」の脳内メカニズムをアプローチし、「失敗から学ぶ人」になれるようサポートできるかもしれません。
特に研究チームは、「失敗を繰り返してしまう薬物依存症」や「失敗を恐れて行動できないひきこもり」といった精神疾患の治療に役立つ可能性があることを示唆しています。
疋田氏も「この研究が、新しい精神疾患の治療へと繋がることを願っています」と述べており、いわゆる「高い意識や精神力、向上心」などではどうにもならない根本的な脳の原因を解決するのに役立つはずです。
もしこうした新しい治療が確立されるなら、全ての人が「失敗は成功のもと」という言葉をポジティブに捉えることができるでしょう。