生態系を丸ごと保存した化石群はめずらしい
生物の化石はたいてい皮膚や臓器などの軟部組織は残らず、歯や骨の断片が単体で見つかることがほとんどです。
そのため、どんな生態をしていたのか、他にどんな生物たちと暮らしていたのかがよく分かりません。
しかしごく稀に、当時の生態系をすっぽりカプセルに封じ込めたかのような化石群が見つかることがあります。
中でも比類のない化石群として有名なのが、1909年にカナダ西部ブリティッシュコロンビア州で見つかった「バージェス頁岩」です。
これは約5億1000万年前のカンブリア紀に当たる化石層で、1909年時にはまったく知られていなかった珍妙な古生物たちが大量に発見されました。
アノマロカリス、オパビニア、ハルキゲニアなどがその代表例です。
この海洋モンスターたちは、古生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドの名著『ワンダフル・ライフ』(1989)によって一般層にも広く知られるようになりました。
カンブリア紀といえば、5億4200万〜5億3000万年前の間に突如として、今日見られる動物の門(ボディプラン)が出そろったた「カンブリア爆発」が起きた時代です。
バージェス頁岩はその後の時代の生物群を保存した化石であり、生命がいかに進化したかを知る上で貴重な手がかりとなっています。
他方で、カンブリア紀に続くオルドビス紀(約4億8830万〜4億4370万年前)の化石群はほとんど見つかっていませんでした。
それゆえ、カンブリア紀の古生物たちがどんな進化の道をたどったのかがよく分からなかったのです。
しかし研究チームは今回、英ウェールズのキャッスルバンク採石場で、約4億6200万年前のオルドビス紀中期に当たる化石群の発見に成功しました。
爆発的な進化を起こしたカンブリア紀の生物はどんな姿に変わっていたのでしょうか?