7歳児に時空間の歪みを教える「アインシュタイン・ファースト」
「アインシュタイン・ファースト」は小中学生を対象にアインシュタイン物理学を教える方法として、今からおよそ10年前、西オーストラリアの2つの学校ではじまりました。
アインシュタイン・ファーストでは複雑な数式を使わず、代わりに体験学習とグループ活動を組合わせた教師との双方向な学習スタイルで、子供たちに現代物理学の概念を教えています。
たとえばアインシュタイン・ファーストでは子供たちに「直線とは何か?」について問いかけます。
ニュートン物理学では曲がっていない真っ直ぐな線が直線だと教わります。
しかしアインシュタイン・ファーストではまず上の図のようなシートを使って、空間が曲がる様子が教えられます。
そして空間が曲がると、シートの上に書かれていた直線も空間と一緒に曲がってしまうことを視覚的に理解してもらいます。
さらに中華鍋、オモチャ、VRを用いて類似の体験を繰り返し、最終的に「物理法則が表面の状態に依存する」ことを楽しく学んでいきます。
もしニュートン物理学しか学ぶことができなければ、大人になるまで「空間が歪む」という概念を知らないままになってしまうでしょう。
またアインシュタイン・ファーストでは「光とは何か?」という問いかけも行われます。
子供たちは光の粒子「光子」の存在を知るため、オモチャの光線銃を使いながら、光の性質に接していきます。
上の図では、少し上の学年の生徒たちに、2重スリット実験をビジュアルを通して教える様子が映っています。
(※2重スリット実験では1つの光子が2つの場所を同時に通過する不思議な現象を理解してもらうのに使われます)
そして最終的に、光電効果やハイゼンベルグの不確定性原理の基礎となる現象を体験していきます。
またアインシュタイン・ファーストでは子供たちに「アインシュタイン」のような有名な物理学者を演じるロールプレイも重視されています。
子供たちはアインシュタイン物理学を理解している有名な科学者として、ニュートン物理学しか信じない古い科学者に、なんとかして真実を伝えようと努力します。
既存の教育で私たちは大人になってからアインシュタイン物理学を学ぶため、多くの人々にとって時空間の伸び縮みや量子世界の不思議さは受け入れがたく信じがたいものになってしまいます。
しかし子供のころからアインシュタイン物理学を体験することで、大人になってから行うより本格的な学習も、抵抗感なく行えるようになります。