ケトン食療法とは何か
ケトン食療法といわれても耳慣れない人がほとんどでしょう。まずは、ケトン食療法について解説します。
ケトン食とは
ケトン食とは、炭水化物(糖質)を控え脂質を多した食事のことです。
通常、脳のエネルギー源は炭水化物などから作られる糖質ですが、体内に糖質が少なくなると、脂質から作られるケトン体を使用するようになります。
ケトン食は、このケトン体を体に多く作り出すことが目的です。
ケトン食は糖質を控えるため、基本的に米や小麦などの炭水化物はできるだけ摂取しません。
砂糖もグラニュー糖ではなく、糖類が含まれていない人工甘味料を使用します。
そのため、ケトン食では脂質を使わない麺類などを活用し、魚、肉、豆腐、卵といった脂質中心の食材で作られます。
このような食事は糖質制限ダイエットでも使用されることから、ケトン食療法としてではなくダイエットの一環としてケトン食を摂取している人もいるでしょう。
ケトン食療法とは
ケトン食療法は、治療として絶食状態にしなければならなかったてんかん患者に対して提供されたことが始まりです。
ケトン食であれば、絶食しなくても体が絶食したときのように飢餓状態になることから、てんかん治療に有効なのではないかと考えられました。
結果、ケトン食療法はてんかん患者の発作軽減に効果があると判明し、日本でも小児のてんかん治療の一環としてよく行われています。
また、魚やアザラシの肉などの脂質を中心としたケトン食のような食習慣を持つイヌイットは、デンマーク人と比較してがんの罹患率が低いという調査結果があります。
1950年代以降欧米型の食文化が進んだイヌイットにはがんが急増しており、食生活の変化ががんに関係するのではないか、と予測できるでしょう。
国内でも糖代謝に異常が起こると大腸がんになりやすいといった調査があり、糖を抑制し、脂質を中心としたケトン食療法ががん治療にも有効なのではないかと注目を集めています。
こういった背景から、大阪大学大学院医学系研究科特任教授である萩原圭祐先生は、ケトン食療法をがんに活用する研究を始めました。