動物の「家畜化」とは?
家畜とは人間が利用するために飼育している動物を指します。
動物の家畜化は「人間が飼育できるような状態になること」を指しますが、単なる人慣れではありません。
人慣れは種全体ではなく1個体で起こりうるもので、家畜化していない野生動物、例えばオオカミなどでも訓練すれば人間に慣れてくれることがあります。
しかし、野生動物の場合、人慣れした個体が生じたとしてもその子どもが人慣れした状態では生まれません。
それに対し、その「人間と暮らせる」性質が子にも受け継がれるのが「家畜化」です。
つまり家畜化では遺伝子の変異が伴うことになります。
人間は長い歴史の中で様々な動物について、従順で利用できる性質を持った個体同士をかけあわせ、同じ性質を持つ個体が生まれるように工夫してきました。
そうして家畜化した動物たちは、野生動物とは異なる遺伝子を持つ動物に変化していったのです。
家畜化で変わるもの
家畜化した動物は野生動物とどのような点が異なっているのでしょうか?
まず欠かせないのがその気性の変化でしょう。
家畜動物の場合、野生動物のように人間に対して危害を及ぼさず、ある程度従順でなければ一緒に暮らすことはできません。
また、体の部位の大きさや繁殖/成長の速さが変化した家畜動物もいます。
肉や皮革を利用する場合には、利用する部位がなるべく大きく、また質の良いものになり、繁殖や成長のスピードが野生動物より速くなることが望ましいためです。
そして、イヌやネコなど人間の生活を支え、基本的に一生を人間と共に暮らす生き物の場合にはその食性や消化器官さえ変わっていきます。
例えばオオカミはほぼ肉食で、肉以外のものは消化できなくはない程度ですが、イヌはもはや雑食です。
完全肉食動物を祖先に持ち、現在も肉食と言われるネコですら、野生であった頃からすると腸が伸びており、穀物類も消化できるようになっています。
肉は人間に欠かせない食料ですし、狩りや漁によってしか得られず、いつでも手に入るわけではありません。
イヌやネコにはある程度量が確保されている穀物も肉とともに与えられ、そんな食生活に適応するために内臓も変化していったと考えられます。
家畜化で変異する遺伝子数は動物による
家畜化するとどのように遺伝子が変異するのか、これまで様々な動物について研究が行われています。
例えば、イノシシとブタについて遺伝子を調査したところ、イノシシにはないブタ特有の遺伝子型が41種類見られました。
オオカミからイヌへの家畜化でも36個の遺伝子が変異したと言われています。
家畜化で変わったものは動物によって異なるため、遺伝子の変わり方はばらばらです。
しかしそんな中でも、ネコの家畜化の遺伝子変異は一線を画しています。
イエネコの先祖であるリビアヤマネコとイエネコの遺伝子を調査すると、遺伝子変異が見られたのはわずか13個でした。
イヌに次いで長い歴史を持つ家畜動物であるはずのネコは、遺伝子的にみると野生のリビアヤマネコとほんの少ししか変わらなかったのです。
ネコはどうして家畜化の過程であまり遺伝子変異が起こらずに済んだのでしょうか?