自尊心の低さと「話題に取り残される恐怖」が「ネット荒らし」に関係していた
チームは2022年にブラジル各地に在住するSNS利用者およそ300人からデータを収集しました。
対象者は独身者50%、女性63%、大学生18.7%で、平均年齢は27.68歳です。
本調査では、SNS利用におけるネット荒らし行動の頻度と、自尊心およびFOMOの程度を評価し、それぞれに関連性があるかを調べています。
そしてデータ分析の結果、自尊心が低く、FOMOが高い人ほど、ネット荒らしをする傾向が強いことが判明したのです。
例えば、自尊心を評価するアンケートで「私は他の人と同じように物事を行えない」と答えた人は、ネット荒らしをする頻度が多いことが分かりました。
これについてサントス氏は、自尊心の低い人は攻撃性を外面化することで、自らの言動を肯定的に感じているのかもしれないと推測しています。
それからFOMO傾向が強い人は、ネット荒らしにより他人の注意を引くことで、自分が周囲から取り残されたり、話題についていけない劣等感から解放されている可能性があると指摘しました。
本研究の成果は、ネット荒らしに影響を与える心理的要因について貴重な洞察を与えるものですが、一方で研究者らは「このデータは相関関係にのみ依拠しているため、まだ因果関係は確立できていない」と限界を認めています。
とはいえ自尊心の低さや話題に取り残される恐怖は程度の差こそあれ、私たちのほとんどが心の内に抱えている性質です。
自尊心とは自分を肯定的に見る度合いであり、それが低い人は「どうせ自分なんて…」と考え、自分の欠点ばかりに目が行き、他人の褒め言葉も素直に受け取れません。
しかし自尊心が低い人はプライドも低いというわけではなく、逆に自身の弱点を隠すために虚勢を張ったりする場合があります。
普通に話題を切り出しても人に聞いてもらえないという思いや、分からない話題やついていけない話題に、取り残されたくないからと無理に入ろうとする思いが、荒らしの原因になるのかもしれません。
全体として、今回の調査結果は「オンライン上の攻撃は、単に反社会的な性質の極端な人だけが実践しているわけではないことを示唆している」とサントス氏は述べています。
しかし今回の研究は、SNS利用が社会に広く普及する中で、この2つの特性が大多数の人の内に眠っていることを踏まえれば、誰もがネット荒らしの加害者にも被害者にもなり得ることを示唆しています。