音楽で「赤ちゃんの痛み」が有意に低下すると判明
今回の実験は2019年4月から2020年2月にかけて、米ニューヨーク市ブロンクスの病院で生まれた新生児100人を対象に行いました。
新生児は平均39.2週の正期産に生まれており、男児53%、女児47%、実験時は生後約2日となっています。
(妊娠37〜41週までが正期産とされ、36週までを早産、42週以降を過期妊娠という)
実験は新生児に一般的に行われる「踵採血」の際に実施されました。
踵採血とは、生まれたばかりの赤ちゃんの踵から少し血を採り、先天性の代謝異常等がないかどうか検査するもので、日本を含む数多くの国で行われています。
具体的な実験の手順は、新生児を2つのグループに分け、一方は何の音楽も流さず、もう一方は「モーツァルトの子守唄」を側に設置したスピーカーから20分間流しました。
子守唄は踵採血の前・最中・後と流し続けます。また、どちらのグループも母親が赤ちゃんを抱っこすることは許されていません。
そして実験者が赤ちゃんの表情・泣き方・呼吸パターン・手足の動き・注意力を指標として、痛みをスコア化しました。
実験者は公平を期すべく、ノイズキャンセリングヘッドホンを装着して、子守唄が流れているかどうかは分からないようにしています。
その結果、「モーツァルトの子守唄」を聴いた赤ちゃんは、音楽なしの赤ちゃんに比べて、痛みスコアが有意に低下することが明らかになったのです。
音楽なしの赤ちゃんの痛みスコアは、採血時に7点、採血の1分後で5.5点、2分後で2点だったのに対し、子守唄を聴いた赤ちゃんは、採血時に4点、採血の1分後で0点、2分後も0点となっています。
3分を超えると両者のスコアに有意差は出ませんでした。
この結果を受けて、研究者は「音楽介入は新生児における痛みを緩和するための簡単かつ安価、そして再現可能なツールとなる」と結論づけています。
なぜ音楽は赤ちゃんの痛みを緩和できるのか?
一方で、なぜ音楽に赤ちゃんの痛みを和らげる効果があるのかはまだ解明されていません。
音楽が赤ちゃんの気を痛みから逸らしている可能性がありますが、以前の研究で、赤ちゃんは母親の声を聞くと唾液中のオキシトシン濃度が上昇することが示されています。
オキシトシンは「愛情ホルモン」として知られ、痛みの緩和に役立つとされる物質です。
もしかしたら音楽にもこれと同じような効果があるのかもしれません。
チームは今後、音楽による痛み緩和のメカニズムを調べるとともに、母親の声や身体的な接触にも同じ効果が得られるかを検証したいと考えています。
赤ちゃんのリラックス用に編曲された「モーツァルトの子守唄」はこちら。