タスマニアタイガーの「最後の生き残り」とは?
タスマニアタイガーは、オーストラリアのタスマニア島に生息していた肉食動物で、正式名称を「フクロオオカミ(学名:Thylacinus cynocephalus)」と呼びます。
「タスマニアタイガー」とは、背中にトラのような縞模様があることから”タスマニア島のトラ”の意で付けられた通称です。
本種は約400万年前に出現し、当初はオーストラリア大陸とニューギニア島を本拠地としていました。
しかし3万年ほど前に人類が進出してくると、乱獲や密猟に加え、人間の家畜として入ってきたディンゴとの生存競争に敗れ、急激に数を減らします。
残った個体はオーストラリア本土の東南端に浮かぶタスマニア島で細々と暮らすことになりましたが、そこでも人間による乱獲や殺戮がつづき絶滅へと向かいました。
1930年に唯一生き残っていた野生個体が射殺され、またロンドン動物園で保護されていた飼育個体も死亡。
1933年に野生個体が再び捕獲されるも、保護先の動物園で1936年に亡くなり、種の絶滅認定がなされています。
(最後の個体はベンジャミンという名前のオスでした)
それ以降も野生での目撃情報がたびたび報告されていますが、確かな発見例はありません。
ベンジャミンの生前の様子がカラー付きで復元されたものがこちらです。(※ 音声はありません)
しかし近年、遺伝子研究の進歩に伴い、マンモスを筆頭とする絶滅動物の復活プロジェクトが進められています。
中でも特に焦点が当てられているのがタスマニアタイガーです。
というのも、タスマニア島にはタスマニアタイガーが生きていた頃の生態系がほとんど保存されており、復活後の導入が容易だからです。
逆に『ジュラシック・パーク』のように現代とは全く異なる環境で暮らしていた生物は、例え復活させられたとしても、彼らが暮らしていた環境の植物や獲物、また温度や湿度を忠実に再現できなければ、長くは生存できない可能性があります。
一方で、タスマニアタイガーを復活させるには、生体の設計図であるDNAのみならず、その設計図を形にするRNAの解読が必須でした。
今回、研究チームはそれをついに成功させたのです。