「乗り手」と「漕ぎ手」は同じ種の異なる形態⁈
調査の結果、この複合生物は軟体動物や環形動物、扁形動物が含まれる「冠輪動物(学名:Lophotrochozoa)」の仲間であることが判明しました。
さらにDNA解析を行ったところ、扁形動物の中の「二生吸虫類」の一種であることが特定されています。
二生吸虫類は、脊椎動物の消化管で生活する寄生生物で、幼生のうちに魚やネコ、人間に食べられることで寄生を開始します。
そして宿主の体内で成長し、産んだ卵をフンに乗せて環境中に放出するのです。
また二生吸虫には、他種の小さな生物の動きを模倣するために集団で合体するものがいます。
おそらく、今回見つかった二生吸虫も集団で塊となり、水中をちょこまかと動き回ることで、宿主となる魚に食べられやすくしているとアダメイコ氏は指摘しました。
さらに「乗り手」と「漕ぎ手」は互いにDNAの一致する同種であることが判明しており、この種が幼生期に2つの異なる形態を使って協力していることが示されています。
アダメイコ氏は、宿主の感染源となって体内で繁殖するのは「乗り手」の方であり、重労働を担っている「漕ぎ手」の方は宿主に飲み込まれた時点で役目を終えて、自分たちを犠牲にするのでしょうと説明しています。
このように仲間を繁殖させるために自らを犠牲にする習性は、他の吸虫にも見られる行動です。
脊椎動物を宿主とする吸虫はこれまでに2万種以上が見つかっていますが、その行動や生態については多くが謎のまま残されています。
アダメイコ氏は次のステップとして、今回見つかった吸虫が互いにどう協力して、コロニーの動きを制御しているかを解明する予定です。
現時点では、漕ぎ手に光を感知できる眼点が認められているため、これが何らかの役割を果たしている可能性があると考えています。
光の差す方に進むことで、個々の漕ぎ手がバラバラの方向に泳ぐのを防いでいるのかもしれません。