「乗り手」と「漕ぎ手」に分かれた複合生物だった!
峯水氏(Ryo Minemizu Photography)が発見した謎の生物は、既知のワームや軟体動物、甲殻類のどれにも当てはまらないものとして、多くの生物学者の注目を集めました。
その一人が、ウィーン医科大学の生物学者イゴール・アダメイコ(Igor Adameyko)氏です。
海洋生物の写真愛好家であるアダメイコ氏はInstagramを閲覧していた際に、峯水氏の投稿したこの生物の写真を見つけたと言います。
強い興味を抱いたアダメイコ氏は、峯水氏に標本を提供してもらえないかとお願いしました。
それから間もなく、氏が働いているスウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institute)に生物の標本が届きます。
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送られた小瓶の中には、豆粒サイズの小さな標本が入っていました。
アダメイコ氏が慎重に解剖してみると、この生物は単一の生き物ではなく、体長数ミリの生物が無数に集まったコロニーであることが判明したのです。
全体としては”船”のような仕組みをしており、主に「褐色の球体」と「半透明の糸状」の2つの部分に分かれていました。
褐色の球体は、精子のような形をした生物が数百匹集まってできた塊であり、自ら推進する力がないことからアダメイコ氏は「乗り手(Passenger)」と呼んでいます。
半透明の糸状は、ワームのようにクネクネと動く生物で、褐色の球体に尾を結び、頭を外側に向けていました。(よく見ると目に当たる2つの黒点が見えます)
そして彼らが泳いで推進力を生み出すことからアダメイコ氏は「漕ぎ手(Sailor)」と呼んでいます。
標本の球体には20匹の漕ぎ手がくっついていました。
アダメイコ氏は「まるでメドゥーサの頭に生えたヘビの髪の毛のようだった」と述べています。
また、彼らの泳ぐ姿が峯水氏により撮影されています。
それでもこの奇妙な複合生物の真の正体は分かりませんでした。
そこでアダメイコ氏は、体内の解剖学的な構造を調べるため、この生物をさまざまな抗体で染色することに。
その結果、神経系の細胞パターンから、ついにどのグループに属する生物であるかが明らかになったのです。