史上最古のブラックホールを発見
今回の超大質量ブラックホールは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた観測により、地球から約35億光年の場所にある銀河団Abell 2744の方向で発見されました。
ただし超大質量ブラックホールはAbell 2744の内に存在するわけではなく、その遥か後方に位置する「UHZ1」という銀河の中で見つかっています。
今回の観測はこの銀河団Abell 2744を利用した重力レンズ効果によって観測されていて、非常に遠方の初期宇宙を観測することに成功したのです。
そんなUHZ1は地球から約132億光年先にあり、その内側から非常に強烈なX線を放つ超大質量ブラックホールが検出されました。
こちらはチャンドラのX線画像とJWSTの赤外線画像を重ね合わせたものです。
四角で囲った中に、超大質量ブラックホールの光とその親銀河であるUHZ1が写っています。
これまでの研究で、非常に強烈なX線は超大質量ブラックホールが成長しつつあるサインであることが分かっています。
そしてチームは、このX線の明るさから超大質量ブラックホールの重さが、少なくとも太陽1000万個分から最大で1億個分に相当すると推定しました。
この質量は、親銀河UHZ1にある全ての星を総合計した重さと同等だといいます。
過去に見つかっている超大質量ブラックホールの重さは一般に、親銀河にある星の総合計の10分の1程度しかありません。
この点からもUHZ1にあるブラックホールは異常な大きさであることが伺えます。
その一方で、ある問題点が指摘されました。
チームの推定では、この超大質量ブラックホールが形成されたのはビッグバンの約4億7000万年後です。
通常ブラックホールは巨大な恒星が寿命を終えて、自らの重力により崩壊することで誕生します。
そして従来の理論では、超大質量ブラックホールはこうしたブラックホールが融合を繰り返しながら徐々に成長して形成されると考えられているのです。
ただ、このようなブラックホールの成長速度には物理的な限界があり、宇宙誕生後のわずか4億7000万年内に、これほど巨大なブラックホールが存在することを説明できません。
しかし、今回の観測は132億光年先に超大質量ブラックホールが確かに存在していることを示しています。
この謎に答えられるのは、新しい理論で存在が予言されていた「アウトサイズ・ブラックホール(Outsize Black Hole)」でした。