新しい理論で予言されていたブラックホールと特徴が一致する⁈
アウトサイズ・ブラックホールとは、本研究主任の一人で米イェール大学(Yale University)の天体物理学者であるプリヤンヴァダ・ナタラジャン(Priyamvada Natarajan)氏が2017年に提唱した新しいブラックホール形成理論から予測されていた天体です。
この理論では、超大質量ブラックホールが恒星質量ブラックホールの融合の繰り返しではなく、広大なガス雲の重力崩壊によって誕生する非常に巨大なブラックホールをスタート地点にして成長していくと仮定されています。
この場合、恒星質量ブラックホールの融合よりも遥かに速く、超大質量ブラックホールの形成が進むことになります。
ナタラジャン氏によれば、ガス雲を”種(タネ)”とすれば宇宙誕生後の数億年内でも超大質量ブラックホールは誕生しうるというのです。
では、その具体的なプロセスを下図を参考に見てみましょう。
まず、左上の1番は広大なガス雲と銀河が互いに接近する様子です。
ナタラジャン氏の説明では、銀河からの放射によってガス雲の中での星形成が妨げられ、新たな銀河になることができず、その代わりにガス雲が重力崩壊を起こしてブラックホールの形成に転じるという。
2番はガス雲の中心部で重力崩壊が始まる瞬間で、3番はそれをズームアップしたものです。
そして4番で小さなブラックホールが産声をあげ、5番で周囲の塵やガスを取り込んでブラックホールと降着円盤(赤い光の部分)が成長。
さらに成長したブラックホールは接近する1番の銀河を飲み込んで、6番の超巨大なアウトサイズ・ブラックホールとなるのです。
アウトサイズ・ブラックホールはその後も、塵やガスを飲み込んで成長を続けます。
これは木を成長させる際に、種から育てるか、苗木から育てるかのような違いだと言います。
ナタラジャン氏によると、今回の超大質量ブラックホールが、その親銀河とほぼ同じ質量になるという質量比などの特徴が、ガス雲による重力崩壊のブラックホール形成の予測と特徴が一致すると話しています。
そのため今回の発見を受けて、「これがアウトサイズ・ブラックホールの存在を証明する初の成果であり、一部のブラックホールは巨大なガス雲によって形成され得ることを示す最良の証拠になると考えている」と述べました。
ただ、その真相を確かめるには更なる追加調査が必要です。
宇宙の始まりや超大質量ブラックホールの起源について、人類はまだまだ知らないことだらけなのでしょう。