日本では出生体重の平均値が下がっている
ヨーロッパを中心とした研究ではすでに「出生体重が低いほど、成人後期において生活習慣病(高血圧や糖尿病)になりやすい」ことが示されています。
その一方で、日本人の大規模集団を対象とした調査は今日まで実施されていませんでした。
しかし現在の日本では昭和の時代に比べて、赤ちゃんの出生体重の平均値が低くなっているという事実があります。
厚生労働省の調べによると、日本の出生体重の平均値は、昭和50年(1975年)に3.20キロだったのに対し、平成12年(2000年)には3.05キロにまで減っているのです。
実際、出生数に占める2.5キロ未満の低出生体重児の割合は1980年代から増加傾向にあり、2005年頃からは9%台で横ばいが続いています。
(※出生体重が2.5キロ未満の赤ちゃんは以前は「未熟児」という呼び方がされていました。現在はこの表現は医学的に正確な状態を表していないとして廃止されています)
より具体的には、日本人の10人に1人が出生体重2.5キロ未満、100人に1人が出生体重1.5キロ未満で生まれているのです。
低出生体重児は、出生後の医療的ケアが必要となるケースが多く、また発育や発達の遅延および障害から、成人後に何らかの疾患リスクが大きくなることが指摘されています。
こうなると、ヨーロッパを中心に報告されている、出生体重と成人後期の生活習慣病の関連を始めとした健康リスクとの関連が、日本人においても見られる傾向であるかどうかは気になる問題です。
そこで研究チームは、日本人を対象とした出生体重と成人期の健康状態との関連調査を実施したのです。
出生体重が小さいほど、成人後期に病気になりやすい!
本研究は2011〜2016年にかけて、秋田・岩手・茨城・長野・高知・愛媛・長崎を含む7県16市町村にお住まいの地域住民11.5 万人(研究開始時40〜74歳)を対象として行われました。
調査では、自身の出生体重と、成人後期に心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞)あるいは生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症・痛風)にかかったことがあるかどうかをアンケートで回答してもらいます。
その後、出生体重を1500g未満、1500~2499g、2500~2999g、3000~3999g、4000g以上の5つに分け、各グループごとに心血管疾患と生活習慣病の発生率を算出。
正常な出生体重である3000~3999gを基準として、その他の出生体重における各疾患リスクを調べました。
その際、教育歴や喫煙習慣、受動喫煙の年数、高血圧または糖尿病の家族歴など、結果に影響を与えそうな因子は調整してあります。
その結果、成人後期の心血管疾患の罹患率は、出生体重が3キロ台のグループと比べて、2.5キロ未満のグループは1.25倍、1.5キロ未満のグループは1.76倍と高くなることが分かりました。
さらに高血圧の罹患率は、出生体重が2.5キロ未満のグループで1.08倍、1.5キロ未満のグループで1.29倍。
そして糖尿病の罹患率は、出生体重が2.5キロ未満のグループで1.26倍、1.5キロ未満のグループで1.53倍となっていたのです。
これらは日本人においても出生体重が低いほど、成人後期(40〜74歳)に心血管疾患や生活習慣病を起こしやすくなることを示した初の成果です。
もしご自身が出生体重2.5キロ未満で生まれているなら、食事や運動、睡眠などの生活習慣に少し気を配った方がいいかもしれません。
チームは次のステップとして、幼少期からの生活習慣への介入により、低体重で生まれた方々の成人期の健康を向上できるかを調べたいと話しています。
また低体重の出生自体を減らすために、妊娠前・妊娠中の母親の健康と適切なケアにも注目していくとのことです。