何のために電気を感じ取っているのか?
チームは最も可能性の高い使い途として、砂の中に潜む獲物を見つけるために電気受容を使っていると考えます。
1990年代から、バンドウイルカは海底の砂地に頭を突っ込んで獲物を探す「クレーター・フィーディング(crater feeding)」という採餌戦略を取っていることが明らかになりました。
(イルカのこの行動がクレーターのような穴を残すことからこの名前が付いている)
こちらがクレーター・フィーディングの映像です。
しかし、イルカたちがどうやって砂の中の獲物の居場所を探知しているのかが分かっておらず、これまでは「エコロケーション」に頼っていると考えられていました。
エコロケーションとは、超音波を発することで目に見えない獲物の位置を特定できる方法で、コウモリなどが得意とします。
ところが研究主任のティム・ヒュットナー(Tim Hüttner)氏は「イルカが砂地に頭を突っ込んだ状態では、超音波は散乱されたり阻害されてしまうのでエコロケーションが上手く機能しない可能性がある」と指摘します。
そこで今回の研究結果も踏まえ、イルカたちは超音波ではなく「電場」を利用している線が濃厚になってきたのです。
実際、電気受容ができるカモノハシは、泥の中に潜むエビやカニが筋肉運動によって発する微弱な生体電流を感知して、獲物の場所を探し当てています。
さらに電気受容であれば、砂地や泥によって阻害されることなく、むしろ頭をグリグリと動かすことで弱い電場を感知しやすくなるというのです。
この頭グリグリは、イルカがクレーター・フィーディングをするときによく見られます。
よって、バンドウイルカは砂地に潜む獲物の狩りに電気受容を使っている可能性が高いようです。
また研究者らは、地球の磁場を感知することで進む方向を決めるナビゲーションにも役立っているのではないかと推測します。
これらの仮説を証明するには野生下での観察が必要ですが、バンドウイルカの生活には「ビビッ!」という感覚が欠かせないのかもしれません。