泣くと痛みに強くなるのか
人はなぜ涙を流すのでしょうか。
涙は、喜びや悲しみ、怒りなどさまざまな感情によって引き起こされ、見ている相手に対し感情を表現する手段の一つでもあります。
泣くというと「赤ちゃん」を思い浮かべる人も多いでしょう。
子どもの時期の泣く行為が持つ機能は、養育者の注意を引きつけ、ケアを引き出すことだと考えられています。
しかし「泣く」ことは子どもだけでなく、大人になってからも続きます。
いままで涙をなぜ大人が流すのかについて明らかにされてはおらず、大人が泣くことはマイナスであるとの主張が多くなされてきました。
たとえば、泣いている人は、虐待やいじめなどにさらされるリスクが高く、能力が低いとの評価を得やすいという負の側面が多く報告されています。
では「泣く」行為にはポジティブな効果はないのかと言われると、そうではないように思えます。
読者の方にも涙を流すことで悲しみや怒りがましになり、気分がスッキリしたなど、プラスの効果を得ることができた経験をした人が多くいると思います。
近年に行なわれた、クロアチアのリエカ大学のアスミール・グラカニン(Asmir Gracanin)氏らの研究では、泣く行為と痛みに対する耐性の関係性について調べています。
彼らは「泣く」行為が痛みに対する耐性の強化や気分の改善をもたらすのではないかと疑問を持ち、涙を流した参加者に電気ショックを与える実験を行いました。
実験に参加したのは女子大学生60名です。
実験者は参加者を以下の2つのグループに分けました。
実験群:悲しい動画を見て涙を流す
統制群:感情的な場面のない動画を見る
痛みに関しては、動画の視聴前後に、参加者の左前腕の内側に徐々に強くなる電流(0 mAから6 mA)を流し、電流を感じたときと痛みを感じ始めたとき、痛みに耐えることが難しく辞めたいときにボタンを押してもらいました。
痛みの目安ですが、1 mAの電流はびりっと感じる程度で、5 mAの電流はとても痛く感じるようです。
また同時にその時の気分についても回答してもらっています。
さて涙を流すことで痛みに対する耐性が強くなったり、ネガティブな感情が晴れたりするのでしょうか。