長い下顎は何に使っていたのか?
アリエナカントゥスがこの特徴的な下顎をどう活用していたかは想像に頼るしかありませんが、それでも研究者らは、長い下アゴのおかげでより高度な狩猟方法や広範な種類の餌を食べるのが可能になったと指摘します。
例えば、カジキはその長い口先を振り回して獲物を殴打し、気絶させたり、あるいは致命傷を負わせて瀕死状態になったところを捕食します。
加えて、天敵である大型のサメに対し、口先でひと突きすることで撃退するケースもあります。
アリエナカントゥスもこうした捕食ないし撃退のために長い下アゴを使ったと考えるのが妥当でしょう。
一方で、似た外見を持つサヨリは長い下顎を身を守るための武器としてではなく、海中に浮いているプランクトンや、水面に落ちてきた昆虫などをすくい取って食べるのに使っています。
もしかしたらアリエナカントゥスも金魚すくいのような方法で、下顎を使い水面の餌を食べていたのかもしれません。
アリエナカントゥスは残念ながら、デボン紀を乗り切ることなく他の板皮類とともに絶滅しました。
しかし研究者らは、脊椎動物が誕生した初期の時代に、これほどユニークな骨を持っていた魚がいたことに驚きを隠せません。
それと同時に、アリエナカントゥスの存在は、その後の脊椎動物における歯やアゴの進化を理解する上でも貴重な情報源になると話します。
ただ、ここまで下顎が特徴的に発達した生物は見つかっていないため、今後もアリエナカントゥスを超えるしゃくれ生物はそう簡単に現れないでしょう。