実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」を解明した論文が正式発表!
実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」を解明した論文が正式発表! / Credit:Samuel T. Fabian et al . Why flying insects gather at artificial light . Nature Communications (2024)
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夜の虫たちは「光に集まっているつもりはなかった」と判明! (2/2)

2024.02.13 17:00:26 Tuesday

前ページ虫は光に引き寄せられているのではない

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下から光が照らされると虫の上下がひっくり返りそのまま失速&墜落

光に突撃するならひっくり返る必要はありません
光に突撃するならひっくり返る必要はありません / Credit:Canva . 川勝康弘

上の図が示すように、下からのに照らされると飛行中のの背腹がひっくり返った状態になり、光源に背を向けるような状態になって失速し、墜落していきました。

ひっくり返って墜落していく様子
ひっくり返って墜落していく様子 / Credit:Samuel T. Fabian et al . Why flying insects gather at artificial light . Nature Communications (2024)

上の動画では実際の虫が下から照らされる光に背を向けるようにして落ちて行っている様子を示しています。

もし虫が光に向かって直進するなら、光の上側で上下逆さまになる必要はなく、そのまま下向きに飛べば済むはずです。

上から光が照らされると急上昇を起こす

光に突撃するなら背を向ける必要はありません
光に突撃するなら背を向ける必要はありません / Credit:Canva . 川勝康弘

また虫が光源の下を通過した場合には、光源に背を向けながら急上昇を起こしました。

急上昇していく様子
急上昇していく様子 / Credit:Samuel T. Fabian et al . Why flying insects gather at artificial light . Nature Communications (2024)

上の動画では右からやってきた虫が上から照射された光に反応して急上昇している様子を示しています。

また実験では急上昇した後に、多くの虫たちが失速を起こして墜落している様子もみられました。

横から光が照らされるとライトの周りをグルグル回る

光に突撃するなら周回するのは矛盾します
光に突撃するなら周回するのは矛盾します / Credit:Canva . 川勝康弘

さらに光が虫の横側からあてられた場合には、光源の周りをグルグル周るような動きをみせました。

興味深いことに、このとき虫たちは光源に対して「突撃」しているのではなく、単に背中側を向けるような飛びかたをしていることがわかりました。

グルグルまわる様子
グルグルまわる様子 / Credit:Samuel T. Fabian et al . Why flying insects gather at artificial light . Nature Communications (2024)

上の図では縦長の光源の周りを虫が周回するように飛んでいる様子が示されています。

3つの結果はどれも虫たちが光源に対して背中を向けようとする過程で引き起こされ、結果的に光源への引き付けにつながっていました。

研究によって発見された光源に対する虫たちの新たな行動パターン3つ
研究によって発見された光源に対する虫たちの新たな行動パターン3つ / Credit:Samuel T. Fabian et al . Why flying insects gather at artificial light . Nature Communications (2024)

上の図はこれら3つの発見をまとめた図となっています。

ここで研究者たちが注目したのが「背光反射」と呼ばれる虫たちの性質でした。

背光反射は虫や魚によくみられる姿勢制御機能であり、明るい方向に背中側を向けようとする反射的な行動になります。

比較的大きな動物にとって上下感覚は重力を感知することで認識されます。

しかし小さな虫や魚にとっては空気や水の粘度が無視できない問題であり、適切な重力を感知することを阻む要因になりがちです。

そのため小さな虫や魚には重力と反対の方向(上)を光の明るさによって感知し、明るい方向に自動的に背中を向ける姿勢制御システムが存在します。

(※あくまで光に背中を向ける性質であり、光に近づく性質ではありません)

研究者たちは光源への接近が虫たちの背光反射を引き起こして、光源への急上昇や墜落を引き起こしている様子が人間にとって「見かけ上」光源に突撃しているように見えている可能性があると結論しました。

そこで次に研究者たちは実際の虫と同じように光源に近づくと「背光反射」を起こすようにプログラムされた架空の虫をシミュレーション空間に設置し、行動パターンを調べました。

すると「光源に接近すると背中を向ける」という簡単な機能しか持たない虫たちにも実際の虫と同じように光源への急上昇や墜落、周回を引き起こすことが判明。

以上の結果は、虫たちに備わった背光反射という世界の上下を認識する単純な仕組みが人工光源によって乱されたことが、虫たちを光の周辺に拘束し続ける原因であるとを示唆します。

背光反射は古くから知られていた反応でしたが、光が昆虫をとらえる原因であると提案されたのは今回の研究が世界ではじめてとなります。

しかしそうなると気になるのが、遠距離から照らされる光の効果です。

今回の研究は光源から数メートルの範囲にいる虫たちの挙動を調べただけであり、より長距離から照らされた光に虫たちが近づいていくことを否定できません。

ただ近年になって行われた研究から、遠くの光に虫が向かっていく可能性は低いと判断されます。

この研究では85メートル先に光源がある空間のなかで50匹の虫が放たれましたが、光源にたどりついたのは2匹のみでした。

そのため研究者たちは、人工照明は遠くにいる虫を惹き付けているのではなく、たまたま近くを通過した昆虫を「明るい範囲に閉じ込めている」だけであると述べています。

また追加の研究では、虫によって背光反射の起こしやすさに違いがあることもわかりました。

たとえばショウジョウバエの一種である「Drosophila spp」や蛾の一種である「Daphnis nerii」などは他の種に比べて背光反射を起こしにくいことが明らかになりました。

そのため研究者たちは、種によって背光反射を起こしやすい光の波長が発見できれば、有害な虫だけを光で集めて駆除できるようになる可能性があると述べています。

人間にとって虫の命は些細なものかもしれませんが、無駄に殺さずにすむならば、それに越したことはないでしょう。

※この記事は対象研究が査読付き論文誌に掲載されたことに合わせて、2023年4月23日に公開した記事を再編集して掲載しています。

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