精神と身体は互いに影響し合っている
大事なプレゼン前に緊張して、お腹が痛くなった。
胸を張り歩いているうちに、気分晴れてきた。
読者のみなさんにはこのような経験をしたことはありませんか。
この事実から分かることは、人間の精神と身体は、完全に分離できるわけではなく、相互に影響を与えあっているということです。
これは「心身相関」と言います。
心の動きは何らかの身体的な変化をもたらし、逆に身体的な変化は何らかの心理的な反応を引き起こすのです。
経験則だけでなく、実際に態度や考え方によって身体の状態に変化が生じることが報告されています。
伊サクロ・クオーレ・カトリック大学のフランチェスコ・パニーニ氏ら(Francesco Pagnini)の研究チームは、事前の期待が健康状態に与える影響について検討しています。
彼らはオンラインで募集した247名に、過去に風邪をひいたか(インフルになったか)、どれくらい症状が続いたか、そしてこの先また風邪をひく(インフルになる)と思うかを尋ね、その後の風邪の罹患率を調べました。
研究チームは、自分はこれから風邪を引く可能性が高いと考えている人ほど、実際に風邪にかかる可能性が高いと考えたのです。
分析の結果、今後自分は風邪をひくだろうを予想した人は、予想していなかった人と比較して、約5.85倍も風邪をひく確率が高くなったのです。
ほかにも疲労感や視力も同様に、事前の期待や思い込みによって左右されるようです。
しかし今まで時間の感じ方が身体・生理にどのような影響を与えるのかはあまり検討がされていませんでした。
一部では、血中のグルコースの増加が、実際の時間の経過よりも、感じた時間の長さとの関連がみられたり、反応時間の速さが、実際の睡眠時間の長さではなく、主観的な睡眠の長さの影響を受けることが示されています。
そこで米ハーバード大学のピーター・アングル氏(Peter Aungle)らの研究で、感じた時間の長さで身体の治癒速度が変わるのかを検討しました。