1日に太陽1個分の物質をむさぼり食って成長中!
調査を進めると、「J0529-4351」の中心部にあるブラックホールは、1日に太陽1個分に相当する物質を吸い込んでおり、猛烈なスピードで急成長していることが分かりました。
1年当たりでは太陽の約370倍の質量を取り込んでおり、その重さはすでに太陽の170億~190億倍になっているといいます。
またブラックホール周囲の降着円盤は直径7光年に達していることも特定されました。
同チームのサミュエル・ライ(Samuel Lai)氏いわく「これは過去に宇宙で見つかっている最大の降着円盤で間違いない」とのことです。
ちなみに天の川銀河の中心ブラックホールいて座A*の降着円盤の直径は約6000万キロメートルとされ太陽系の水星軌道とほぼ同じ大きさです。1光年は約9兆4608億kmで、「J0529-4351」の直径である7光年は地球から太陽までの距離(1天文単位)の約45万倍に相当します。
これにより、「J0529-4351」は太陽の約500兆倍の明るさを発しており、これまでに観測された中で最も明るい天体を記録しました。
これを受けてチームは、J0529-4351の光度が「エディントン限界(Eddington limit)」に限りなく近づいている可能性があると指摘します。
エディントン限界とは何か?
クエーサーのように降着円盤を持つ天体では、中心部のブラックホールに向かって絶えずガスや塵が吸い込まれる同時に、膨大な量の光エネルギーが放出されています。
この時の物質を吸い込む力が「重力」であり、光エネルギーを外に押し出す力が「放射力」です。
この重力と放射力の2つの力が釣り合った状態が「エディントン限界」であり、その天体が放出できる光度の限界値に達します。
天体は通常、このエディントン限界以下の光度で輝いていますが、もし放射力が重力を上回り、エディントン限界を超えてしまうと、降着円盤も吹き飛んでしまうと考えられています。
しかし、J0529-4351の光度が本当にエディントン限界に達しているかどうかを調べるにはさらなる観測が必要です。
また研究者らは、120億光年先にあるJ0529-4351を詳しく調べることで、初期宇宙において超大質量ブラックホールがどのように形成されるかに関する謎も明らかにできるかもしれないと述べています。
怪物ブラックホールは今も太陽1個分の食料を毎日食べてグングンと成長中。
一体どこまで大きくなるのでしょうか?