クラゲの蛍光タンパク質から「指紋検出スプレー」が開発される
今回研究チームは、オワンクラゲ(学名:Aequorea coerulescens)に含まれる緑色蛍光タンパク質(GFP)に着目しました。
この緑色蛍光タンパク質は、青色の光を吸収して緑色の蛍光を発光するという特徴があり、実際にオワンクラゲは青色の光によって蛍光を発します。
そしてこの緑色蛍光タンパク質のメリットは、生物学的なプロセスに影響を与えることなく視覚化するという点にあります。
ある細胞のタンパク質に緑色蛍光タンパク質を組み込むと、細胞に青色光を当てるだけで、内部の緑色蛍光タンパク質が緑色に光るのです。
しかも緑色蛍光タンパク質は無害であるため、細胞は生きたまま、その機能を失うこともありません。
こうしたメリットから、緑色蛍光タンパク質は様々な科学研究に利用されてきました。
そしてこの緑色蛍光タンパク質は、指紋内に存在するDNAにも悪影響を与えることはないようです。
そこで研究チームは今回、緑色蛍光タンパク質を使用した無害な水溶性スプレーを開発しました。
このスプレーは、次のように作用します。
このスプレーを指紋が付いた表面に塗布すると、プラスに帯電した染料分子が、指紋の汗や脂に含まれるマイナスに帯電した脂肪分子やアミノ酸分子と結合します。
そして染料分子は隆線に沿って固定され、青色光を当てることで10秒以内に蛍光を発するのです。
これはつまり、「スプレーと青色光があれば、10秒で容疑者の指紋を浮かび上がらせることが可能」だということです。
この浮かび上がった指紋をカメラで撮影し記録すれば、後からデータで参照することが可能です。
このスプレーはDNAを損傷させないので、指紋の形状を採取した後、指紋に含まれるDNA分析を妨げることはありません。
またスプレー自体は非常に細かい液滴で構成されているため、指紋に塗布しても物理的な損傷を与えることはありません。
さらに、従来の技術では困難だった「レンガのようなザラザラした表面」からも、効果的に指紋を浮かび上がらせることができるという。
ちなみにこのスプレーは、容疑者が少し前に残した指紋も浮き上がらせることができ、適用期間は最長1週間となっています。
スプレーには、「LFP-Yellow」と「LFP-Red」という異なる染料のバージョンがあり、それぞれ黄色と赤色の蛍光を発します。
スプレーの色が1種類だけだと、指紋が付いた表面が同じ色だった場合に検出が難しくなりますが、2種類あることで検出の幅が広がります。
ジェームス氏は、「今後はさらに多くの色を生み出していきたい」と述べています。
このように、新しく開発された指紋検出スプレーには、多くのメリットがあります。
これを現場で用いるなら、一層素早く犯人を特定できるようになるかもしれません。
研究チームは、このスプレーを現場で実用化するために、既にいくつかの企業と協力体制を結んでおり、さらなる作業を進めています。