「0」が引き起こす脳活動パターンは「1」に最も似ている
脳内でゼロはどのように処理されているのか?
答えを得るため研究者たちは脳磁計(MEG)と呼ばれる装置が用意されました。
MEGを使うと、脳内でわずかに発生する磁場変化をとらえて、脳活動を記録することが可能です。
(※脳波計が脳の電気活動を読み取るのに対して、脳磁計は脳の磁気活動を読み取ります)
調査ではまず、29人の被験者の脳活動をMEGで調べつつ、上の図のような、2通りの簡単な課題を行ってもらいました。
1つ目は0~5個のドットを見る、数字を使わない課題です。
この課題では、被験者たちの目の前に「(空白)」「・」「・・」「・・・」「・・・・」「・・・・・」というドットの図が示されます。
(※具体的には、ドットの描かれた2枚の図を見て、描かれたドットの数が同じかどうか答えてもらうもの)
2つ目は0~5のアラビア数字を見る、数字を使う課題となります。
この課題では、被験者たちの目の前に「0」「1」「2」「3」「4」「5」と記された図が提示されます。
(※具体的には、色付きで描かれた数字を見て、最も大きな数字を描くのに使った色を答えるもの)
次に得られたMEGデータをAIに学ばせ、脳活動パターンの特徴を抽出しました。
すると、0でみられた脳活動パターンは1に最も近いことが判明します。
また数字たちの間に、ある種の特徴的な関係があることもわかりました。
上の図では、それぞれの数字に対する脳活動パターンを視覚的に示したものとなります。
ドットをみた場合には、0~5のそれぞれの脳活動には数直線上に並んでおり、数的に近いものは、距離的にも近くなっているのがわかります。
実際グラフでみると、2と3の距離は2と5の距離よりも短くなってるのがわかります。
数字をみた場合でも(密集していてわかりにくいですが)ドットをみたときと同じように直線的な距離関係がみられることが判明します。
そしてどちらの場合でも0はおおむね数直線上に配置されていることがわかりました。
この結果は、脳内において0の概念は自然数に付属する、あるいは内包される形で存在していることを示しています。
同様の0が自然数の一派であるとする結果は、動物の脳を調べた研究でも示されています。
つまり人間も動物も、自然数の心理的数直線の下端に0を配置しているのです。
研究者たちは「このような共有された配置は、0が数える対象がないことを知覚するための脳活動の基礎になっていることを示している」と述べています。
つまり脳活動のレベルでは、0は何もない「無」と区別されているようなのです。