踊る人間を描いた「ダンザンテ」の岩絵
ダンザンテの岩絵は、ペルー南部の砂漠地帯に広がるトロ・ムエルト(Toro Muerto:スペイン語で 「死んだ雄牛」の意)という場所にあります。
トロ・ムエルトは南米最大級の岩絵のホットスポットであり、これまでに約2600個の岩絵が見つかっています。
その中でもダンザンテの数は非常に多く、下の赤点で示されたものはすべてダンザンテを描いた岩絵です。
その一方で、ダンザンテの研究はほとんど行われておらず、考古学者の間でも一貫したコンセンサスが得られていません。
そこで研究チームは今回、ダンザンテがどのような文脈で描かれたものなのかを調査することにしました。
まずはダンザンテがどういうものなのかを見てみましょう。
こちらは岩の表面に彫刻された代表的なダンザンテの絵を見えやすいように再現したものです。
Tシャツの柄にでもしたいような面白いイメージですね。
放射性炭素年代測定の結果、ダンザンテは約2000年前にトロ・ムエルトにいた単一の民族たちによって描かれたものと考えられています。
人物像の高さはどれも平均20〜30センチで、そのほとんどが腕を上げ下げしていたり、両足を肩幅以上に広げて膝を曲げるなど、ダイナミックなポージングを取っていました。
また頭部にはマスクか帽子のようなものを被っているようです。
ここまでを踏まえると、研究者らは「儀式中に踊っている人間を描いたものと見て間違いない」と考えています。
ただ分からないのは踊る人間のまわりに描かれているジグザグ線や三重線、点模様などでした。
踊る人間のまわりには決まって、多種多様な幾何学模様が描きこまれています。
これまでの調査によると、これらの模様はヘビや稲妻、あるいは水の流れを描いたものではないかと推測されていました。
しかし研究者らは、南米コロンビアに住む他の先住民族が残した岩絵との比較から、まったく別の意味があると考えます。
それが「幻覚剤でトリップ中に見られたサイケデリックな視覚表現」です。