・蛾は羽根の「しっぽ」が長いほど生存率が高くなることが判明
・しっぽが長ければ長いほど、捕食者であるコウモリの目を欺けることが考えられる
・このような捕食者の知覚的弱点をつく進化は、他の生態においてもみられる
Science Advancesに掲載された研究により、蛾の羽根の「しっぽ」は「長くて大きい」ほど、捕食関係にあるコウモリから逃れられる可能性が高いことが分かりました。
http://advances.sciencemag.org/content/4/7/eaar7428.full
過去の研究から、蛾の羽根についた尻尾のような突起物に、コウモリが発する超音波を回避する性能があることは分かっていましたが、どのような形状の羽根が最も捕食されにくいのかについては分かっていませんでした。
そこで研究者たちは今回初めて、数え切れないほど多くの種類がある蛾の羽根を蛾の進化モデルに当てはめ、特徴的な羽根が出現した要因を分析しました。
蛾の系統図にそれぞれの羽根の特徴をマッピングした結果、羽根の長さや複雑な形状は時間をかけて徐々に変化したのではなく、急激な変化を遂げていたことが分かりました。これは、羽根の形状が捕食者であるコウモリから身を護るための重要な要因であることを示唆しています。
回避能力が備わっている蛾の羽根の形状は世界各所で見られ、異なる種類の蛾でも共通しています。これは、蛾がコウモリから身を護るために必然的に羽根の形状を変化させる必要があったことで、収斂進化したことを意味していると考えられます。
また研究チームは、羽根の形状を調査した後、実際に異なるタイプの羽根がコウモリに対してどれほど効果があるのかを実験しました。
「3種類の蛾」を、コウモリがいる部屋にそれぞれ放ち、ハイスピードカメラと超音波センサで部屋を観察。実験で用いられた蛾は、一般的な羽根の形状をもつ「ポリフェムスヤママユ」、比較的尾が長い「アメリカオオミズアオ」、世界一尾が長いとされる「マダガスカルオナガヤママユ」です。
調査の結果、最も羽根が短い「ポリフェムスヤママユ」の生存確率は27%。そして、「アメリカオオミズアオ」の生存率は73%でした。しかし、その数字は「アメリカオオミズアオ」の中でも尻尾が「短く」なると45%に減少し、尻尾が「なくなると」34%まで減少。また、最も尾が長い「マダガスカルオナガヤママユ」についても同様の傾向がみられました。
コウモリは通常、蛾の羽根を避けて本体部分だけを捕食します。そのため蛾の「本体」に狙いを定める習性がありますが、今回の結果から、蛾は長い尻尾によってコウモリに狙いを絞らせていないことが分かります。
すなわち、そうすることでコウモリを困惑させ、身代わりとして尻尾の部分を攻撃させていることが推測されるのです。蛾の「飛行」にとって重要なのは身体前方の羽根(前翅)であり、後方にある羽根(後翅)は失っても大きな損失にはなりません。
研究を率いたジュリエット・ルービン氏は、「獲物である蛾は、捕食者の知覚的な弱点をつくような進化を遂げているようです。これは蛾に限らず、別の生態系においても起こっている現象であるといえるでしょう」と語っています。
via: ScienceDaily / translated & text by ヨッシー
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