「ゲロマズ」カエルでワニたちを学習させる
研究チームは、2019年~2022年にかけて、オーストラリア北西部のキンバリー地域の4カ所に、オオヒキガエルの死骸を散布しました。
これは単なる死骸ではなく、加工された死骸です。
研究チームは、約2400匹のオオヒキガエルを集め、有毒な部位を取り除きました。
さらに、その無毒になったオオヒキガエルのお尻に、致死性はないが一時的に吐き気を誘発し、気分を悪くさせる化学物質(塩化リチウム)を注入しました。
そして研究チームは、この「ゲロマズ」カエルを散布し、オーストラリアワニたちがどうなるかを観察しました。
その結果、オーストラリアワニたちは加工されたカエルを食べ、オオヒキガエルが自分にとって不快な存在であることを学びました。
生きた有毒のオオヒキガエルを食べることがなくなったのです。
実際、オオヒキガエルが数年間生息している地域で、オーストラリアワニがオオヒキガエルを食べて死亡するケースが95%も減少し、その効果は継続しました。
例えば、ある地域では2020年に63頭のワニの死体が発見されていました。
しかし、ゲロマズカエル散布後の2021年には、ヒキガエルを食べて死んだワニの死体はたった3頭だけでした。
さらに別の地域では、学習後にオオヒキガエルを食べるワニはいなくなりました。
対照的に、ゲロマズカエルが散布されていない近隣地域では、同時期に20~40%のワニがオオヒキガエルを食べて死んでいました。
加工したオオヒキガエルを散布するという方法は、希少なオーストラリアワニを保護するのに大きな効果を発揮したのです。
実験後の経過も良好であり、研究チームは、「このプログラムの後、ワニの個体数が戻ってきているのが分かります」と報告しています。
ただ、これはあまり持続可能性のある手段とは言えないので、「この方法をいつまで続けるべきか」という観点で、今後も観察が必要でしょう。
窮地を脱し、個体数が回復したオーストラリアワニに対して、見守るだけで大丈夫なのか、それとも定期的にゲロマズカエルを与え続ける必要があるのか、考慮する必要はありそうです。